2020新春放談企画「エディスト・スタイルでいこう!」 中編 -編集部一推し記事

2020/01/02(木)12:00
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  • ●EditTourスペシャル そのとき、山は動いた

吉村: 2019年で大きかったのは、鈴木康代学匠が発起人になって、編集ワークショップ「Edit Tour全国版が行われたこと。開催にエディストのオープンは間に合わなかったけれども、大きな出来事でしたね。ワークショップも担った[]の師範たちを中心エディストライターとして一気に参加してくれた 

 

川野: 私も大阪で、ワークショップの手伝いをしました。どうしても編集学校のイベントは東京ばかりになりがちです。もともと編集学校はオンラインの学校ではあるんですけど、イシスで学ぶことは、現実に使えて初めて意味がある全国で編集学校がリアルの世界で動いているようすを伝えていくことは、「エディスト」の大切な役割だと思います。 

 

上杉: 支所のみなさんの活動記事も楽しみですよね。なかなか今までは活動の内容を知る機会がなかったですから。編集学校の九州支所・九天玄氣組の中野組長が組員さんを対象にインタビューをしてくださっているのは、シリーズものとしていいですね。他の支所の企画も、もっとでてくるとキソイが生まれてきそうです。 

 

: 後藤さんと上杉さんはいつ頃から合流したんでしたっけ 

 

後藤: 私はオープンの時はまだ[]師範代中で。でもその最中に声をかけていただいて9月の感門之盟で金さんと松原さんがエディストを紹介しているのを見てから入れてもらいました。 

 

上杉: 僕も後藤さんと同じタイミングで合流しました。 

 

松原: 後藤さんと上杉さんは、実際に運営メンバーとして関わって、いかがですか。 

 


松原朋子

設樂剛事務所 インターミディエイター。離退院、師範代後、マイクロソフトを退社。全く機能していなかったイシス編集学校のSNSを駆動させ、イシス広報の基盤を確立、「あいだ」を編集する卓抜な編集マネジメント力であらゆるプロジェクトに欠かせない存在。


 

後藤: エディストに関わってまず思ったことは、編集学校ではこんなにも日々何かが起こっているんだということ。今までリアルに起こっていることや支所の活動のことなどを網羅的に知る機会がなかったので、日々の出来事を体感できたのは鮮烈でした。特に九天玄氣組の中野組長の思いを、記事として生で聞けたのは大きかったです。 

 

上杉: イシスで起こっている出来事を、日本地図を上から見るような感覚で掴めるようになったというか。「イシスで日々起こっていることが世界的なニュースだ」という松岡校長の言葉はこういうことなのかと感じましたね。 

 

後藤: 昨年で印象に残ったのは先ほど話に上がったEdit Tourスペシャル特集ですね。各地のツアー記事がばらばらに存在していたんですが、集めてみると20本以上の記事があったので、ギュッとまとめて特集したらエディスト上でもお祭りができるんじゃないかなと思って企画してみました。全国同時多発で開催されたエディットツアーを追体験する感覚がありました。 

 

上杉: 個人的には2つ思いがあって、Edit Tourを知らない人に、各地のローカルな面も含めてイベント自体を知ってもらいたいということがひとつ。もうひとつは、入門前の方にとって、同じ目線の参加者の声が聞けるということができないかと考えました。入門前の方の声を感じられるエディスト記事はまだ少なく、様々な人の声を温度感とともに伝えられたらという気持ちでしたね 

 

: Edit Tourスペシャルエディストオープンのタイミングがちょうどいい感じでしたよね 

 

上杉: 初めての校長ディレクションは、2019年7月23日にありましたよね。6月の立ち上げメンバーとのキックオフ・ミーティングの時に執筆のお題が出て、公開に向けて全員でニュースをとにかく書いてみようというフェーズもありました。 エディストオープン前に記事80らいありましたよね。それをひとつずつ確認していきました。 

 

: コンパイルな「普段パンツ」とエディットな「勝負パンツ」で書き分けるという試みもありましたね(笑)。 

 

吉村: 7月23日の校長のディレクションが結構大きかったよね。校長のレジュメはみんなに公開してもいいよね? 

 

松原: 林頭!あれはだめですエディスト参加している人だけが見られるという特別レジュメにしておきませんか(笑) 

 

: また、怒られましたね(笑)。じゃあ、ここだけちょっとお見せしますね。コツは、ポッと出、締めくくり」「常套句は使わない」「記者然とするこのレジュメの存在がやっぱり、ターニングポイントになりましたね。 

 

川野: 「イシスの記者になりきれ!」という檄に見えます。私にとっては、引き受けるからには完全に入りこむように、というメッセージですね。 

 

吉村: 次のEdit Tourスペシャルは2月(詳細はこちら)にあります次はEdistするうえで改良したいことはあるのかな。 

 

 

 

後藤: そうですね、全国からリアルタイム記事を出せたらいいですけれどもね 

 

上杉: 予告は出したいですよね 

 

: 前回の経験、良かったところ修正すべきところも、フィードバックして次に生かしたいですよねたとえば、Just記事はもっと増やしたり、濃い内容にできたりしますかね。 

 

吉村: そうだね。特に、リアルタイムでJust記事を書くとき、僕が意識しているのは、まんべんなく書かないということですね。注目するポイントは1個なんだよね。1個から連想や言い換えや照合を広げる。それで終わらせる、という感じ。米田奈穂師範代の回ったら、ないもの」「不足」だけをポイントにする。渋谷菜穂子師範代だったさだまさしではじまり、さだまさしで終わる。

 

: まんべんなく記事を書いてしまう読みどころが分からないですよね 

 

吉村: 出発のレトリック到着のレトリックの話を校長の受け売りでよくするんですが、まずは何に着目するかがスタートとしては大事じゃないかな。金くんなんかは、記事を書く時にどういうことを意識してる? 

 

: そうですね、記事によって違いますが、僕はそこで起こっていることと同時に、 それと関係づけられそうな別の情報に注意のカーソルを向けます注意のカーソルを複数持つ。たとえば、多読ジムの記事では、オジー・オズボーンと重ねた。そのとき、関係性を結ぶ襞がどこにあるのか必死に探す。

 

吉村: 僕の場合は、いかに変なこと、ユニークなことに着目するか着目したところが広げられるか。金くんだと外から持ってきて、何につなげられるか、だよね 

 

: 係をつくりやすいテーマや素材や切り口があります。ただし、ベースとして記事で伝えたいことは必ず押さえます。それを外したら元も子もないので。外と結びつけるには普段から世の中で起こっていることをよく観察することも大切ですね。僕は発見したことはすべてスマホにメモっています。 

 

 

  • ●2019独断と偏見の編集部一推し記事①

松原: では、少し話題を変えて。2019年にエディストに公開された記事のなかで、みなさんが気に入っている一推し記事をお伺いしてみたいのですが 

 

後藤: 丸洋子さんの「離ディストの離ユニオン 退院式へ」ですね。とにかく丸さんは言葉が綺麗特に最後の段落が美しい。離学衆としても「日々の「ひとしずく」に含まれるかけがえのない「すべて」を切り出すあの切実を再び味わう特別な一日は、間近に迫っている。」には[]の日々が思い出されて胸が熱くなりました。  

 

吉村: こんな言葉絶対出ないね。これは僕には書けないです 

 

: 丸さんの場合は、実際にそう思っているんですよね。自分が思っていることをできる限り思ったことに近い言葉書いていくのが、ライターとしてはできるといいですよね。嘘をつくと読者はすぐに見破る。 

 

吉村: 丸さんの記事で、大音冊匠の誕生紹介している記事があるんですけど、「殺傷ではありませんよ」。大音冊匠が笑みを湛えて襲名を披露。「さっしょう」というやや剣呑な言葉の響きから、こう抱負を述べた」って、ごく優雅な感じなんですよね。自分なら笑いにしちゃうけれども、これは丸洋子節という感じですよね  

 

: 丸さんはスタイルができていますよね。外から知的なものをってくるのが相当うまい。下手にやるとゴテゴテした文章になるんですけど、サラッととそれができてしまうんですよね。 

 

上杉: 僕のお気に入り記事は、清水伺名子さんの「六十四編集技法 【46測度(metric)】数字は全てを語れない」ですね。まず、編集64技法に挑まれていることと、高知のローカル性が新鮮で面白くて。伺名子さんは、建築と本のある場をテーマに記事を書いている増岡麻子さんと上杉チームになっていただいて、お互いの記事の感想を共有したり相談事項を交わし合ったり、そうした交歓もイシスらしいなぁと思います。あとは、編工研のデザイナーの穂積さんがコラボして64技法のフォンの意匠をしてくださっているのも必見です。こうしたコラボレーションがもっと起こったら嬉しいですね。 

 

吉村:穂積は細部にこだわる、こだわりすぎるデザイナーだからね。(ここで穂積を呼ぶ)おーい、穂積くーん。 

 


穂積晴明  編集的先達:E.E.カミングス

編集工学研究所デザイナー。立教大学在学中に編工研インターン入所。在学中からプロジェクトを任せられ、クライアントには年齢の鯖を読んでいる。ういろう売り口上、チャールストン、ドラム演奏など多芸の持主。デザイナーの父を持つ編集サラブレッド。

 
 
  • ●エディストデザインへのこだわり

上杉: あれってどれぐらいの時間でできるんですか 

 

穂積: 文字の形によりますが、1つ30分ぐらいですかね。実は64技法のうち20個ぐらいすでにあがってて、いまはもっと速度が上がってきました。漢字はアンバランスな感じにしようとしているんです。枠が四角なので、動きようにしています。上の部分をわざと開けたり、はみ出させたり。校長からもバランスを崩す方向性のディレクションが多いので、それを意識してやっています 

英語のフォント2つ以上のフォントを組み合わせて、新しい文字の雰囲気をつくろうという試みで、こちらは実験的ですね 

 

 

 

上杉: ぱっと見ると読めないような漢字ではあるんですが、それがかえって、空白や虫食い状態やぼかしのような効果があって。見えないからこそ覗きたくなるアフォーダンスがありますよね。それでいて64技法として一貫している。わかりにくさと一貫性、その兼ね合いがいい具合で毎回楽しみです。 

 

穂積: ありがとうございます。千夜千冊エディションの字紋っぽい感じというか。一覧して64できたら面白い感じになると思うので、並べてみたいですね。 

 

吉村: これ、もう20個出来上がっていますと清水さんにプレッシャーをかけるのはどうですか?(笑) 

 

上杉: そうですね、伺名子さんなら、これがいい!と、その中から順次選んで、楽しみながらやっていただけそうですね(笑) 

 

後藤: フォントやロゴなどの制作話を聞きたいです

 

穂積: ロゴについては、「遊刊エディスト」ですから、週刊少年ジャンプイメージがわきまして、林頭からも親しみやすくて日常的なもの、よく見るもの、というディレクションともつかないようなディレクションがあっ(笑)華美なものじゃないほうがいいと思って、シンプルなゴシック斜体をかけたデザインで校長に出しました。遊刊の「遊」の字が、今はすでに調整したものですが最初はもう少し潰れてこをもっと広げて、とディレクションを受けましたこういう細部気を配らないとあかんのだなと思わせられました 

 カテゴリーのモチーフについては、林頭と相談して、毎日のニュースが載るエディストなんだから、日用品を使ったらどうかと。それで日用品を100個ぐらいリストアップして、どれがいいかを林頭に出して選んでもらいました。8つプラス10ぐらいを出して、それを変な見方にしてほしいということで、例えば、絆創膏から煙が出ていた、がま口からクリップが出ていた、ちょっと不思議な感じを反映させました。福田繁雄というデザイナーの方がいらっしゃるんですが、トリックアートをデザインに取り入れる人で。その福田さんのドローイングのペンを参考にしながらシルエットを描きました。 

 

: 今年は、なにか企んでいることはあるんですか? 

 

穂積: エディストで使うにせよ、使わないにせよ、カテゴリーのアイコンを増やしていきたいですそれから、記事単位でいろんな意匠に挑戦していきたいと思います。記事ごとに特殊化するというか。いずれエディストデザイン部をつくりたいというのも野望です。 

 

: たとえば、穂積くんの方から、こういう記事はどうですかという提案はありますか? 

 

穂積: すごつくりこんだ松岡正剛が書いたレジェンド記事があっても面白いと思いますね。その装飾デザインは担当します。それからライターとしては、千夜千冊でラップをしたいです 

 

上杉: ラップですか?! 

 

穂積: はい。実は松岡正剛事務所の寺平さんと西村さんと穂積で、毎週木曜日に千夜ラップをやっているんですが、今年は穂積のリリックをお届けしたい。 

 

吉村: 今年はこの後、穂積のリリックが、千夜千冊が更新されるたびにエディストに掲載されていきますので、楽しみにしてください! 

 

: キャッチ画像は千夜千冊をLPのジャケットみたいにデザインしてカッコよく作ってほしい。 

 

穂積: もう一つの新年の抱負は、エディストグッズを作りたいですね。 

 

上杉: カテゴリーごとのアイコンもかわいいですしね。 

 

: 「-st」の付箋とかいいですよね。 

 

後藤: ああ、付箋、いいかもこの仕事はJust!とか。 

 

穂積: 20周年エディストグッズ期待してください! 

 

 

つづく

 

 

2020新春放談企画「エディスト・スタイルでいこう!」 前編

2020新春放談企画「エディスト・スタイルでいこう!」 中編

2020新春放談企画「エディスト・スタイルでいこう!」 後編(1月3日公開)

 

 

  • 吉村堅樹

    僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。

コメント

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山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025