「殺傷ではありませんよ」 大音美弥子の新ロール

2019/11/20(水)11:06
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「動機は婚活でもいいんですよ」
13離の感門之盟の壇上で、大音美弥子師範のハスキーボイスが、歌うように「多読ジム」を語る。いよいよ来春1月13日にスタートする「読筋」を鍛える多読ジム。一般的な読書の概念を大きく覆す独特の方法を、大音師範は3つ紹介した。

 

1.耽読=コトワザ
  読み方の技能をマスターする方法として、スタイルやモードを自分で追求していく。
2.系読=コトガラ
  いくつもの本をブラウジングして並べていきながら、「個と類」のうち、とくに「類」の感覚を磨く。
3.共読=コトホギ
  自身で本の内と外にさまざまな繋がりを発見しながら、一人では辿り着けない読みを仲間と共に深める。

 

多読ジムでは、本と自分が混ざり、交わり、相互編集がぐっと深まっていく読書法を、このほか何通りも身につけることができる。
「あとはじっさいにジムに来て発見してください」。大音師範はドラマの予告編のように、その先を伏せた。

感門之盟に先がけ、大音師範には新しいロール名、「冊匠」(さっしょう)が松岡正剛校長より贈られている。「殺傷ではありませんよ」。大音冊匠が笑みを湛えて襲名を披露。「さっしょう」というやや剣呑な言葉の響きから、こう抱負を述べた。「離がアジールなら、多読ジムはサバトにしたい」

 

松岡校長は、著書『多読術』(ちくまプリマー新書)で「本にさらわれたい」と思う恋心が大切なのだと語っている。自分の内にあるせつない思いや揺らぎをそっと抱えながら、五感を研ぎ澄ませ、本と、手と手を取り合って未知への旅に出る。多読ジムを受講する動機は、ホント(本と)の道行、婚活、恋愛ドラマなのかもしれない。
申し込み締切は今月末。ジムの入口で、冊匠が溢れる愛を胸に、両腕を広げて待っている。

  • 丸洋子

    編集的先達:ゲオルク・ジンメル。鳥たちの水浴びの音で目覚める。午後にはお庭で英国紅茶と手焼きのクッキー。その品の良さから、誰もが丸さんの子どもになりたいという憧れの存在。主婦のかたわら、翻訳も手がける。

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コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。