ひらりカレイド・スカート 花伝敢談儀

2019/09/03(火)12:00
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 「指南に向かう時は、香水をふり、師範代の衣装に着替えるんです」。


 サマーグリーンのスカートを翻す江野澤由美師範代の一言一句に、放伝生は熱心に耳を傾け、ペンを走らせる。2019年7月27日の敢談儀、先達トークのひと幕である。


 41[守]カレイド・スカート教室の飛行は常に順調とはいかなかった。進行役の林朝恵番匠は、江野澤の師範代体験を手際よく引き出していく。

 

序盤は稽古の足並みも揃っていたが、中盤にトップを走る学衆の家族が急逝し、稽古離脱を余儀なくされた。[守]のハイライトである番選ボードレールの時期、トップ不在の教室は低迷。エントリー作品も少なかった。


 しかし江野澤はあきらめない。前へ前へと進み続ける。回答が少ない状況をどう生かすかを考え抜いた。まとめ指南を多様し、兄弟教室の番ボー作品を勧学会で紹介するなど編集機会をあえて増やしていった。やがて黙々と稽古していた学衆に変化が訪れ、仲間と声をかけ合うようになった。

 

 卒門が近づく終盤には、離脱していた学衆も教室に舞い戻り、師範代も学衆も手を取り合うように喜んだ。汁講も大阪で1回、東京で2回と張りきって、江野澤は汁講クイーンの異名をとる。これには林も唸った。どんな時でも場に尽くし、動き続ける編集が教室を上昇気流に乗せたのだ。


 「どうやってスイッチ入れたの?」。林が切り出すと「”とにかく楽しもう!”と書いたメモを壁に貼って、毎日見ていたんです」。江野澤はポッと顔を赤らめた。

  • 林朝恵

    編集的先達:ウディ・アレン。「あいだ」と「らしさ」の相互編集の達人、くすぐりポイントを見つけるとニヤリと笑う。NYへ映画留学後、千人の外国人講師の人事に。花伝所の花目付、倶楽部撮家で撮影・編集とマルチロールで進行中。

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コメント

1~3件/3件

若林牧子

2025-07-02

 連想をひろげて、こちらのキャビアはどうだろう?その名も『フィンガーライム』という柑橘。別名『キャ
ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
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