【インタビュー】イシスの講座に大工の影? 44[守]の学番匠

10/12(土)09:20
img

 イシス編集学校には、さまざまな肩書が存在する。キーとなる編集術のルル三条(ルール・ロール・ツール)にあやかり、編集学校内では肩書のことを「ロール名」と呼ぶことが多い。連雀、方師、半東、別番、綴師……。普通の学校では聞き慣れないロール名がずらり並ぶ。世界に一つの講座に携わるのだから、世界に一つのロール名が与えられるというわけだ。が、学衆に直接指南をつける「師範代」以外のさまざまなロールは、なかなか受講者からその役割が見えづらい。

 

 [守]においては、その最たるロールが、恐らく「番匠」ではないだろうか。教室につく師範・師範代でも、講座全体をリードする学匠でもない。いったいどんな役割を担っているのか。「番匠」を辞書で引くと、かつて諸国から毎年京に上って建築の現場を統括していた建築職人たちとある。編集学校の講座には大工までいるようだ。

 

 「番」は「つがい」とも読む。通常、番匠ロールは二人の編集コーチが受け持つ。次期の44[守]では、新しい番匠が立つことになった。両者とも、43[守]師範からの抜擢となる。新番匠の井ノ上裕二(38[守][破]熱線シーザー教室師範代)と和田めぐみ(39[守]・40[破]サラーム同堂教室師範代)、そして学匠の鈴木康代に番匠ロールについて聞いてみた。

 

*****


――番匠の役割とは、どういうところにあるのでしょう。

 

和田:現在のところ100%手探り状態で、とにかくなんでも言挙げしていこうという決意だけで走っていますが、まずはやはり、学匠の右腕・左腕、助さん・格さんというイメージですね。

 

44[守]番匠・井ノ上裕二。イシスの異端児が、いよいよ学匠の参謀となる。

 

井ノ上:昨期までやっていた師範については「遊撃隊」と見立てていましたが、番匠は「参謀」かなと。大前研一さんの著書にある「参謀五戒」をヘンシュー的に言い換えて、懐に忍ばせています。

 

鈴木:はい。金剛力士像のような阿吽の呼吸で、[守]の方法から編集的世界観へひきつけるなにかを期待したいですね。これは師範も同じですが、当期[守]稽古だけでなく、編集学校のウチソトを繋いでいって欲しいとも思います。

 

井ノ上:和田さんは、井ノ上の荒いパスを受け止めて、適切にならす力があります。

 

鈴木:井ノ上さんと和田さんに期待したのは、シーザーとサラームですから、それぞれの目指す向きというか、憧れが違うのではないか、ターゲットが両極なのではないか、創発の編集をおこせるかもしれない、というところですね。

 

――するとさしづめ、井ノ上番匠が阿形、和田番匠が吽形というところでしょうか(笑)。番匠は学匠の脇に控える、サブディレクターというところですか。

 

和田:師範・師範代の「孫の手」でもありたいなと思っています。指南やコーチングの加減に迷っている現場のコーチの後押しをするような。とにかく奥にあるのは、編集への好奇心なんですよね。学衆さんに、楽しい、充実した、好奇心をかき立てる稽古体験をして欲しいです。

 

44[守]番匠・和田めぐみ。沈着にあらゆる事態を受け止める編集で、講座を俯瞰する。

 

鈴木:番匠は、自由度の高いロールですよね。ペアでいるので、たしかに相手と違う動きをすることも必要とされ、「間と隙の職人」というところもあります。お二人に、番匠という一段違うところで全体を見る目を持ってもらいたいという思いもありました。

 

井ノ上:師範代・師範の時は、同期の編集コーチの動きはあまり見ず、目の前の与件のみに集中する方法をとってましたが、番匠ロールでは、ちゃんと全体を追っていかねば、と自戒しています。

 

和田:教室に立ち続ける師範代に「なっていく」醍醐味を味わってほしいです。多層に、多角に、場を展開して、束に「なっていく」プロセスをつくっていくお手伝いができればと思っています。

 

井ノ上:44[守]は実力派の師範が揃ってます。師範代は初登板が多く、大ベテランの再登板のようなこともありません。この結果どうなるか、不確定性も楽しんでいきたいです。

 

[守]学匠・鈴木康代。イシス屈指の千里眼編集の使い手は、実は泣き虫でもある。

 

*****


 井ノ上は海外在住歴20年のベテラン駐在員として、今はタイ法人と日本法人の間に立ち、和田は立正佼成会の職員として、やはり聖俗の間を取り持っている。本業でも「間と隙の職人」として腕を鳴らす二人が、ウチとソトの境界線を大いに活性化してくれそうだ。開講は、2019年10月21日。44[守]にマレビトよ、来たれ

 


  • 川野貴志

    編集的先達:多和田葉子。語って名人。綴って達人。場に交わって別格の職人。軽妙かつ絶妙な編集術で、全講座、プロジェクトから引っ張りだこの「イシスの至宝」。野望は「国語で編集」から「編集で国語」への大転換。

  • シーザーのキュア・ナイフ 43[守]チーム小史

    イシス編集学校の教室は松岡正剛校長によって名付けられる。師範と師範代で構成されるチームは、師範自身が名前を付ける。あまたの編集行為の中でもネーミング編集は格段の難題だが、チームをリードする覚悟を示すため、毎期各師範は編 […]

  • シーザーの「祭りの後」 タイガー・リリー教室

    ここで、メッセージの交換がされることはもう永久にない。  2019年9月16日、43[守]の18教室に次々と鍵がかけられた。街道の提灯が一つひとつ消えていくような寂しさには、イシス編集学校のベテラン指導陣とてなかなか慣 […]

  • 病理医右筆のおしゃべり 重版出来

    卓上に並べられた、十種の葉物野菜。八百屋ではなく、病理学の授業だ。病理診断には、病態から「らしさ」をつかみ取ることと、病状の進行を判断する「物差し」を持つことが欠かせない。    高校生向けの出前授業で、がん […]