記憶を喚起する”物語”が鍵 鈴木康代の未知奥物語

10/22(火)12:59
img

 3・11後、多くの人がフクシマから退避した。郡山在住の鈴木康代(8[離])は取り残されたように感じた。この地に移住した先祖を一度は恨んだ。


 自宅の庭を眺めるうちにそれは後悔に変わり、ある決心にいたった。「この郷土に住み着いた名もなき人びとの歴史と文化を言葉にしよう」。


 鈴木は地元で聞き取りを続け、記録を試みる。ある老婆は、災害体験を「なかったこと」にしていた。鈴木は推測する。生活基盤が瞬時に崩壊するような苛烈な体験によって「自分と事件」「現実と想像」の境目があいまいになったのではないか。


 別の老人は、洪水時に牛や馬と一緒に流された体験を淡々と語った。それはあまりにも非日常的な事件だった。聞き取りの記録で再現し、他者に伝えることは難しい。

 

 鈴木は気がついた。「例えば手入れした庭の木々にも、思い出がある。3・11は、そういった生活の文脈を破壊した。ならば、再生すべきは記憶と想像力を喚起するための物語ではないだろうか」。

 

 鈴木の東北編集は遅々としている。どう物語をつくるのか見当もついていない。だが、その編集の歩みが止まることは決してない。


  • 井ノ上シーザー

    編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。バンコク在住、湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。

  • 上を向いて笑う白川“らくだ” 44[守]伝習座前日の本楼

    「根本的な問いってなにか、ということなんだよね」。   林頭・吉村堅樹が清水優年(44[守]師範)に問いかける。     2019年12月13日の20時45分。44[守]第二回伝習座前日の本楼での光景だ。清水 […]

  • 「怒らない師範」 景山和浩の変身願望

    師範代の悩みを聞きいれ、信頼を得ながら才能を最大限に引き上げる。本業はスポーツ新聞の紙面編集、趣味は陶芸。その温厚な人柄で「仙人」ともよばれる景山和浩。師範登板は今回の44[守]で12回目、番匠登板経験も5回というイシ […]

  • ミポリン、ススキノ疾駆する 第11回未知奥声文会

    「ふと、夕暮れ時に人気を避けたくなる。そんな時は一人で郊外のお寺に向かう」。鈴木康代(8[離])が告白する。2018年10月、第11回未知奥声文会で「境界体験」を語り合った時のことであった。    「羅漢像が […]

  • 44[守]師範代 ドクター華岡の“うっかり”大阪紀行

    開講1カ月後と、異例なタイミングの汁講であった。企画者は、イシス若手ホープとのよび声も高い44[守]師範代・華岡晃生。“ドクター・カ ーソル”とい う教室名の通り、職業は金沢在住の研修医。高速な頭の回転とアフォーダンス […]

  • 読書はアレに似ているか 未知奥声文会

    「読書はどのような行為に似ているか」。2019年7月の第19回未知奥声文会であがった話題だ。「セックスかスパーリングのようなものっすね」と井ノ上裕二(6[離])が口火を切った。    井ノ上は「イシスでは最近 […]