記憶を喚起する”物語”が鍵 鈴木康代の未知奥物語

10/22(火)12:59
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 3・11後、多くの人がフクシマから退避した。郡山在住の鈴木康代(8[離])は取り残されたように感じた。この地に移住した先祖を一度は恨んだ。


 自宅の庭を眺めるうちにそれは後悔に変わり、ある決心にいたった。「この郷土に住み着いた名もなき人びとの歴史と文化を言葉にしよう」。


 鈴木は地元で聞き取りを続け、記録を試みる。ある老婆は、災害体験を「なかったこと」にしていた。鈴木は推測する。生活基盤が瞬時に崩壊するような苛烈な体験によって「自分と事件」「現実と想像」の境目があいまいになったのではないか。


 別の老人は、洪水時に牛や馬と一緒に流された体験を淡々と語った。それはあまりにも非日常的な事件だった。聞き取りの記録で再現し、他者に伝えることは難しい。

 

 鈴木は気がついた。「例えば手入れした庭の木々にも、思い出がある。3・11は、そういった生活の文脈を破壊した。ならば、再生すべきは記憶と想像力を喚起するための物語ではないだろうか」。

 

 鈴木の東北編集は遅々としている。どう物語をつくるのか見当もついていない。だが、その編集の歩みが止まることは決してない。


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