ISIS 20周年師範代リレー [第32期 長田陽子 エディストの原型はこの人のもんどりにあり]

2021/09/20(月)11:45
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2000年に産声をあげたネットの学校[イシス編集学校]は、2020年6月に20周年を迎えた。第45期の師範代までを、1期ずつ数珠つなぎにしながら、20年のクロニクルを紹介する。

 

◇◇◇

今でこそ[守]も[破]も[花]も、春と秋の年2回開講だが、[守]が年3回開講されていた幻の2年間(2012~2013年)がある。第32期[守]はその”年3回”の最後の期であった。前を走る31[守]が卒門への最終コーナーに差し掛かると同時に32[守]はスタートラインに立った。

 

その中に宝来もんどり教室の長田陽子もいた。森光子の「放浪記」さながら《もんどり》を打つ覚悟で師範代として登板。新聞社に勤める長田の《もんどり》は教室が寝静まった頃に静かに、でも必ずやってくる。「こんばんは」から始まる指南はどんな時であっても丁寧で実直。力のある言葉で教室を引っ張り、同じチームの師範代にもエールを贈り続けた。

 

「編集学校を見れば社会がわかる」とは校長松岡正剛の言葉だが、ニュースと日々隣り合わせの長田を見れば世の中の動向がわかる。講座期間中に解散総選挙などとなれば指南にまで影響が及んでしまう。教室と世界を両腕に抱き込んで[守][破]の師範代を走り切った長田は当時発足したばかりの「SNS伝奏連」のメンバーに抜擢。今や感門之盟となれば遊刊エディストで記事が連打されるのは当たり前の風景となったが、その原型は「SNS伝奏連」にある。ミッションは感門之盟に並走してリアルタイムで編集学校のSNSにニュースを届けていくこと。壇上で感極まる師範代に心を重ね、時には目に涙を溜めながら、長田は閉会後もデスクに残り記事をアップし続けた。

 

大切な宝物を愛でるように編集学校を言葉にして記していく。遊刊エディストの面影には、確かに長田の《もんどり》が刻み込まれているのである。

◎師範代メッセージ◎


 

>あのときメッセージ>

方法に食らいつく姿は怪人に迫る少年探偵団。ヒッグス粒子確定から「いいとも」終幕へ。時代を越境するときめきと寂しさを引き金に、型が撃ち抜いたのは使い古しの「当たり前」。花開いたのは方法への新たな希望。瑠璃色の勇気を魅せた痛快な期でした。

 

>これからメッセージ>

方法の進化が求められる今、ますます編集が必要に。次の20年へ共に走りましょう。

 

宝来もんどり教室 長田陽子


 

 

●あの日!あの時!千夜千冊!●

〇「あわせ・かさね・きそい」これ、方法日本の真骨頂

1526夜:藤原成一『かさねの作法』

…2013年11月30日

◎女の子なら、一度はピンクを着こなしてみたい

1528夜:エルザ・スキャパレリ『ショッキング・ピンクを生んだ女』

…2013年12月14日

⦿君には劇薬をあおるつもりがあるか

1535夜:山崎努『俳優のノート』

…2014年02月20日

Designed by 穂積晴明

 

 

  • 後藤由加里

    編集的先達:石内都
    NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。