■バニー・デビューは突然に
結局「バニーメン」とはなんだったのか。感門之盟Inform共読区、数日前タブロイド紙が送付された。その番組表を見て驚いたのは、参加者だけではない。「感門之盟の司会を」という学林局のオファーを承諾しただけなのに、自分たちの預かり知らぬところで「バニーメン」として売り出されていた4人の男たちがいた。
▲左から、新井陽大(44[破]師範代、多読ジム冊師)、桂大介(14[離]火元)、蒔田俊介(44[破]師範代)、中村麻人(46[守]師範、34[花]錬成師範)。
次代を担う若きイシスメンは、イギリスのパンクバンド「Echo & the Bunnymen」のオマージュとして架空のCDジャケットまで制作されていたのである。それはまるで、誘われたハワイ旅行で突然デビュー会見をさせられた16歳の相葉雅紀のようだ。イシスのジャニー喜多川は、悪だくみにこそ全力を注ぐ林頭吉村堅樹。
4人なかにバニーメンの謎を握る男がいる。それは、本番初日でも第一の兎男として卒門式の司会にあたった新井陽大(あらいあきひろ)だ。
「どうして俺はバニーなのか」
彼はもう3年以上、この問いに葛藤していた。
■勝手にバニー、涙の共食い
「休んでいるあいだに、なぜかバニーになっていたんです」
新井は、2016年秋、38[守]で師範代初登板。その後、高校で世界史の教鞭をとるクリアな話しぶりが買われ、エディットツアーなどリアル講座を担当する実香連(じっこうれん)に引き抜かれた。不穏な空気を感じたのはそのころだった。久しぶりに豪徳寺に顔を出すと、吉村を中心に「エディット・バニー」と呼ばれるようになっていたのだ。
新井は悩んだ。自分の語り口がウサギっぽいのか、みずからの「観学ミミクリー教室」からくりくりのお耳が生えてきたのか、はたまた豪徳寺の猫がぴょんと化けたのか、とんと見当がつかない。
傷心の新井は、ついに海外に逃亡した。行き先はウクライナ。そして、彼の地でうさぎの肉を食べた。ふと思った。
「バニーにケリをつけよう」
■いとしのバニー
帰国してすぐ、43[守]師範代に志願した。新しい教室名をもらえば、バニーは上書きされるはず。あだ名の払拭には、校長の力を借りるしかない。新井はこれまでの知力を総動員し、5つの教室名候補を練りあげた。2019年9月、五反田DNPホールで感門之盟が開催される。バニーとの決別の日がやってきた。新井は鼻をふくらます。時は来た。
「バニー蔵之助教室です!」
会場はどっと湧く。立ち尽くす新井の目の前を、ちょんまげ結った白ウサギが駆けてゆく。観客席でぷかり煙草をふかしているのは、眼鏡に口髭のチェシャ猫だった。
1年後、バニー蔵之助は「バニー注進蔵」に進化した。新井にはもう迷いはない。あだ名とは他者からの共読だ。他者編集を受け入れることで、みずからの可能性は倍増になる。「師範代のバニ井です」 そう名乗る真っ赤なおめめの新井は、一人前の兎になった。
■Inform共読区 Eiko & the Bunnymen
▲胸に兎の四文字を。蒔田の快活な司会ぶりが突破式にビートを刻む。
▲卒門式後半は、感門ではめずらしく座ったままの司会姿。桂は、ホテルのラウンジでくつろぐよう優雅に。
▲績了式を凛と務めたのは、舞台にあがるごと「めざましいね」と松岡校長から微笑まれては、はにかみ続けた中村。
写真:後藤由加里
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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