後の祭りのPlayback共読区【75感門】

2021/03/21(日)09:38
img

 サッショー大音は悔やんでいた。

 

 20分で20年のブックウェアな業績を振り返るという無茶ブリ企画におののいて、いつも以上に言わねばならぬこと・言いたいことの整理ができなかったためだ。
 だいたいこの人はアタマの整理が苦手だ。大阪一長い商店街が彼女の原郷だからだろうか。ついフラフラ横道にそれ、面白そうに見える場を冷やかしてしまうのである。


 今回のようにナビは平成生まれのiGen梅澤奈央、ゲストに松丸本舗の顔だった着物美人森山智子、「あの声が聞こえると感門之盟を実感する」と校長に言わせたカンモン名人中山有加里を迎えた豪華さに、浮き足だったのも止むないことか。忸怩たる思いがレッド・ゾーンを振り切る前に、後の祭りを踊りたい。

 

 Playback共読区でのサッショーの大きな言い落としは、

 

1. ブレイクスルー=松岡校長(の企画)がどんな境界をまたいだか
2. ハイパー=設営した場や方法の何がハイパーだったか
3. イシス=編集学校はどうかかわったか

 

という肝心の3項目に及んでいる。以下では参考千夜千冊も挙げてみたが、すべてのプランニングの最初に与件の整理と並行して「コップは何に使えるか」や「たくさんの私」があった。蛇足としてすべてのリアル展開の前に長い「図書街」の時代があったことも想起したい(千夜千冊:0959夜)。


  • 【三冊屋】
    感門コメント:本をカジュアルな存在にするマジックワード=3
    ブレイクスルー:一冊売りの原則
    ハイパー:間を読むから多冊主義
    イシス:北原ひでお、小池純代を筆頭とする読書巧者イシス人が三冊編集に参加
    千夜千冊:0752夜1214夜
  •  
  • 【松丸本舗】
    感門コメント:本棚が丸くても、カゴを持たされてもいいじゃないか
    ブレイクスルー:書店・出版社・取次側の事情による書店の制約
    ハイパー:本屋で待ってるダブル・コンティンジェンシー
    イシス:ブックショップエディターとして師範・師範代がリアル編集。さらに校長自ら店主として各種催し(店主閣)を実施
    千夜千冊:1186夜1299夜1320夜1326夜1328夜1330夜1343夜1397夜1471夜1480夜1486夜1552夜
  •  
  • 【MUJI BOOKS】
    感門コメント:暮らしの「さしすせそ」に寄り添う本・ギフトとしての本
    ブレイクスルー:業種の垣根
    ハイパー:生活とインテリアをつなぐ偶然性と異化編集
    イシス:博多MUJIでは九天玄氣組が文脈棚の棚組を担当、大音は3か月間MUJI店員もどきをやつす
    千夜千冊:1493夜1589夜
  •  
  • 【近大アカデミックシアター】
    感門コメント:「ドンデン読み」の方法が1F(noah)と2F(ドンデン)を結ぶ架け橋
    ブレイクスルー:進分類法とアーカイブ性に縛られた大学図書館
    ハイパー:(大学)図書館における別様の可能性
    イシス:選書・リコメンドチームに師範・師範代・千離衆・OBを投入。
    選書スターについてはタブロイド:米川青馬の項目を参照
    千夜千冊:1249夜1605夜
  •  
  • 【角川武蔵野ミュージアム・エディットタウン】
    感門コメント:アニマを揺さぶる9つの「本区(EditTown)」を「本棚劇場」へのパッサージュとして設営
    ブレイクスルー:ハイとローの垣根≒「本」の持つ孤高な排他性
    ハイパー:フェチ×オブジェ=スペクタクル
    イシス:選書・リコメンドルーフチームに師範・師範代・千離衆・OB・九天玄氣組等を自在に活用
    千夜千冊:1759夜1764夜
  •  

 

 仏教思想、サブカル、チンパンジー、着物。本の中には何でも入る。いはんや雑華荘厳する本を並べる本棚、本棚を集めた書店・図書館においてをや。がおーっ、聖域を許すなビーム! なのである。

 

 

yukarin

帝京大生がメクリを通じて本に親しむ。その間に呼応する共読ナビゲーター、その先頭にすべてを率いる中山の姿が。


 一方、絶賛稼働中の帝京共読コースついては中山有加里の懇切なレポート通り。ただ、その最初期は元ブックショップエディターの中から川田淳子(司書)を軸にスタート。2期目を池澤祐子(元外資系マネジャー)が引き継ぎ、小川玲子(華道師範。現花伝師範)、鈴木郁恵(在京九天玄氣組員)、大音美弥子が順次加わっていった。すべて「メクリ」以前のカンブリア紀の話である。

 

 千夜千冊1767夜では「歴史が知になるのは歴史事実にひそむフェティシュが作動したから」という石塚正英氏の持論が紹介された。共読区の歴史事実にフェチな関心を寄せていただければ、後の祭りも甲斐あるもの、というところか。

 

 木村久美子が10年の歳月をかけて準備した多読ジムについては、「敷居が高い」との噂も聞くが、多読エクササイズはみんなそろっての編集稽古とは別ものであることを忘れてはいけない。受講者一人ひとりは顔が違うように、読書体験も鍛えたいチカラも異なっている。ヘビーに汗を流すのもライトに駆け抜けるのも読衆次第。敷居高く感じるのは、本人のM気質をうらむべきか。百聞・百迷を吹き飛ばし、ひとまずそのフレクシブルな共読を体感してみてはいかがだろう。


◆多読ジム season06 春

 2021年4月12日(月)スタート!
 申込締め切り3月31日(水) 申込はこちらから
 https://es.isis.ne.jp/gym


  • 大音美弥子

    編集的先達:パティ・スミス 「千夜千冊エディション」の校正から書店での棚づくり、読書会やワークショップまで、本シリーズの川上から川下までを一挙にになう千夜千冊エディション研究家。かつては伝説の書店「松丸本舗」の名物ブックショップエディター。読書の匠として松岡正剛から「冊匠」と呼ばれ、イシス編集学校の読書講座「多読ジム」を牽引する。遊刊エディストでは、ほぼ日刊のブックガイド「読めば、MIYAKO」、お悩み事に本で答える「千悩千冊」など連載中。