[ISIS for NEXT20#2][承]風吹けば吉村はためくイシス空―林頭吉村堅樹の志向力ー

2021/01/04(月)10:00
img

radio EDIST アシスタントパーソナリティの梅澤奈央です。

 

イシスは、人こそ宝。

この番組「林頭吉村堅樹の志向力」は、とくに大勢のイシスメンバーの名前が登場します。

みなさんの師範や師範代も登場するかも。

 

人も多彩であれば、一人ひとりのもつ才能も重層的。

編集学校の指導陣は、本業をもちながら編集コーチをし、ときにはカメラを担ぎイベントの裏方にもなる。

感門之盟の手足となった「感門団」とは、ポリロール主義の象徴かもしれませんね。

 

本日の[承]編は、7:00〜13:50ころまでを収録。

じつはラジオエディスト、ジングルもBGMも本業は美容師深谷の自作。

音響含め、すみずみまでどうぞお聴きください。

 

>>>[序]はこちら

>>>[起]はこちら

 


[ISIS for NEXT20#2][承] 林頭吉村堅樹の志向力―風吹けば吉村はためくイシス空


 

―――吉村堅樹は凧のようだ。全身で突っ張りながら風を受け、風のままに進んでゆく。[起]で語られた前半生に続き、イシス入門後に話が及んだ。風吹けば、イシスの空に吉村がはためく。

 


■[破]でやめるつもりだった 
 流れ流れのイシス遍歴

 

深谷:人生、流れ、流れてって感じなんですね。

 

吉村:そうなんですよ、結局編集学校も流されるままで。花伝所なんか行くつもりなかったんですよ。

 

 

―――吉村が入門したのは、2008年10月、20[守]。そこから、[守]、[破]、[花伝所]、[守]の師範代、[離]と進んだのにも関わらず、またそんなことを言っている。「はじめから、[破]でやめるか、[物語]講座へ進もうかと思っていた」という吉村が花伝所に進んだのは、とある師範代の存在があった。

 

吉村:[破]教室の師範代が中村紀子さん(20[守][破]発熱ポンパドゥール師範代)で、中村さんはね、深谷さんみたいにズバズバいう人だったんですよ。

 

深谷:ははは。

 

吉村:[破]の最初、知文術の稽古あたりで、「吉村さん、花伝所行きましょうね」って言うんですよ。なので、そう言われたから「せっかくなので行きます」っていう感じで……

 

―――言われたから、やりました。主体性のなさが心配になるが、これも偶然を迎えにいくという吉村の方法なのだろう。放伝後、22[守]でエスペラ七茶教室の師範代をつとめあげ、6[離]へ進む。校長の知に恋い焦がれて、[離]へ入院する者が多いなか、吉村は不届きな企みを抱えていた。

 

吉村:[離]も行こうとは思ってなかったんですけど、「中村師範代が[離]に行くらしい」と聞いたんです。めったに同じ時期にやれることはないじゃないですか。そこで、いよいよ中村師範代と雌雄を決する時が来た!みたいな感じで進んだんです(笑)

 

―――恩師師範代との対決がしたい。吉村の負けず嫌い精神が無邪気に顔を出す。むろん「典離」の称号を目指したが、それは苦い敗退に終わる。20周年感門之盟の際にもそれを吐露。松岡校長は「まだ気にしているのか」とそのしぶとさに息をのんでいた。

 


■「できません」とは言えなくて

 いつのまにやら編工研入社

 

―――そして、退院後はひょんなことから、平城京遷都1300年記念「NARASIAプロジェクト」を手伝うことになる。

 

吉村:[離]の退院課題「離論」を提出したあとに、香保さん(太田香保、[離]総匠、松岡正剛事務所ディレクター)からメールが来ました。「平城京遷都、まだ手伝う気ありますか?」って。あ、僕そんなこと言ってたんだっけなと思って、「ありますよ」と返事をしたんですよ。そうしたら「通えますか」って聞かれて。香保さんに通えないですとは言えなかったんですよね……。そのまま次の日から通うことになりました。

 

―――[離]学衆にとって、総匠は絶対的な存在なのである。ここでも吉村は、自身で選びとったのではなく、なんとなく流されてゆく。

 


■期待絶頂のイシス10周年
 その後迎えた311の危機

 

―――吉村が入社したのは、2010年、ちょうどイシス10周年の時期だった。吉村いわく、当時は2009年10月オープンの松丸本舗が大ニュースになるなど、イシスや編集工学の未来に対する期待のピーク。その後311が起こり、一気に冷水を浴びせられることになる。通常200人定員の[守]入門者が、2011年は100人未満。イシス最大の危機を、吉村は学林局メンバーとしてどう乗り切ったのか。

 

吉村:僕はもともと入社したとき、学林配属じゃなかったんですよ。でも当時、「編集学校と千夜千冊以外は、編工研の仕事なんてひとつも世の中に残るわけがない」と言いまくっていたら、「吉村は編集学校が好きだから、学林に移そう」ということになりました。

 

―――学衆数の激減を乗り切るべく、通常年2回の春・秋開講であるが、[守]は夏にも入門機会を設けることとなった。そのため2012〜13年は、[守]が年3回、[破]が年2回の変則開講となる。2014年に通常体制に戻るが、そのきっかけとなったのは意外な理由だった。

 

吉村:僕は、2012年の年末には「林頭」というロールになっていて、そのころには年2回開講に戻しても大丈夫かなと思っていました。もとに戻れるなと思った大きなきっかけは、「感門団」の発足ですね。

 

深谷:感門団ですか。

 

吉村:2012年の3月10日、東京・赤坂の草月ホールでやったときの感門之盟で、はじめて感門団が動いたんです。

 

 

■感門団はどしゃ降りの日に
 板挟みの吉村を救ったのは

 

―――「そのころは、編集学校も迷走していたのかもしれません」

イシス編集学校イチの晴れ舞台、感門之盟。講座の修了を祝い、ねぎらうセレモニーとして、20周年記念感門では400名以上が涙した感動の場。


しかし、現在のかたちになるまでには紆余曲折があった。吉村が7[離]の半東として参加した感門之盟に違和感を覚えたという。感門之盟のあとのアフ感では、それまで手作り感がある食事がサーブされていたのにこのときは出来合いの簡素なものだったり、BGMがあまりの爆音で話ができないほどだったりと、しつらえももてなしもパッとしないものだった。

 

吉村:その感門の1ヶ月後くらいかなあ、大雨の日に村井さん(村井宏志、21[守]原色ファニー教室師範代)が来たんです。「こんな感門之盟は、編集学校らしくない」と。
「人手が足りないんだったら、僕らが手伝います」っていう話を3〜4時間しましたね。それで「感門団」という名前をつけて、手伝ってもらったのが草月ホールでの感門之盟だったんです。

 

深谷:村井さんもずいぶん思い切って提案なさったんですね。

 

吉村:村井さんの代の、21[守]師範代同期って仲がいいんですよ。最初の感門団は、ほぼ同期師範代でしたね。顔ぶれは、村井さん、中山有加里さん(21[守]風船りぼん教室師範代)、齋藤シゲさん(齋藤成憲、20[守]かくれんボレロ教室師範代)、五味さん(五味久恵、21[守]芯々グリッサンド教室師範代)、小西さん(小西明子、19[守]宴歌屋台教室師範代)とか。いまだに編集学校にいるようなメンバーばっかり。そして、大泉さん(大泉智敬、21[守]アルチ残響教室師範代)を感門団副団長にして、村井さんが団長にという編成になりました。


―――それ以前の感門之盟は、櫛田理(当時編工研、現EDITHON代表)が進行を担当。2012年の感門のときに、はじめて吉村が進行を引き継ぐことになった。感門団も初仕事なら、吉村もピカピカの1年生。ほうぼうから要求を受け、疲れ果てたという。

 

吉村:僕も感門の進行なんて、やったことないですよ。櫛田くんの進行表を参考にしていたら、周囲からは「吉村さんのやりたいようにやらないとダメです」みたいにプレッシャーをかけられて。

で、逆に講座リーダーの木村さん(木村久美子さん、当時[破]学匠)とか冨澤さん(冨澤陽一郎、当時[守]学匠)からは「ちゃんと講座の時間取れよ」ってぐいぐい言われ。

 

―――板挟みになり、ふさぎこむ吉村。そんなとき、女神が手をさしのべた。

 

吉村:僕としてはその軋轢を突破するコミュニケーションのすべもなく、すごく落ち込んでいたんですよ。どないせえっちゅうねんって。あるとき、階段からとぼとぼと帰ろうとしたら田中さん(田中晶子所長)が来て、慰めてくれたんですよ。「落ち込まなくていいよ、みんな応援してるんだから!」って。そのとき、ほんとこの人優しいなって、涙が出そうになりました。

 

深谷:エディストプロフィールにあった「徹夜明けのスタッフに味噌汁をふるまう、イシス一優しい花伝所長」ってそういうことでしたか。

 

吉村:そうそう! 夜明けの味噌汁とか、びっくりしましたよ(笑)

 

―――インタビュー撮影をしていた田中は、「記憶にない」とカラカラ笑うが、吉村は助けられたのは自分だけではないと耳打ちする。

MUJI BOOKSのプロジェクトのとき、応接室で何日も徹夜しているスタッフがいたという。周囲は自分の仕事もひどく忙しく、どうしても関われなかった。そんななか田中は、徹夜しているスタッフに朝、味噌汁を作って差し入れる。吉村は田中を「いちばん弱っているときに助けてくれる人」と称した。

 

―――イシスの女神たちに手を引かれ、[破]でやめるはずが、なぜだか感門之盟のディレクターに。吉村は、ただ流されているのではない。自分のおかれた環境で、なにができるか。偶然から生じる機を鷲掴みにし、それをなんとかかたちにする。風を読み、みずからが向かいたい方角へ進んでゆく。貪欲な凧、吉村はこのあとイシスで「本丸」に突入する。

 


>>>[転]へつづく

 

[ISIS for NEXT20]#2 林頭吉村堅樹の志向力

[序] (2020/1/2公開)

[起]「僧侶で神父」の真相は (2020/1/3公開)

[承]風吹けば吉村はためくイシス空 (2020/1/4公開)

[転]新規事業はドブネズミのごとく (2020/1/5公開)

[結]全編集は志に向かえ (2020/1/6公開)

 


  • 梅澤奈央

    編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで絶賛編集力向上中。今、最も旬なエディスト「うめこ」のこれからの活躍に刮目されたし。47[破]番記者、36[花]錬成師範。