日本を編集するとは、地域を編集することだ。
2020年9月20日、21日。イシス編集学校は「Edit Japan 2020」と銘打ち、開校20年を寿ぐイベントを開催した。
参加者は300名を超え、裏方だけでも総勢140名のスタッフが関わった。
オンライン配信となった本イベントは、大阪・近畿大学会場にて配信を一手に引き受けた「曼名伽組・面影座」なしには成立し得なかった。
その立役者は、曼名伽組組長・面影座座長の小島伸吾。
小島は名古屋にて、感門特別新聞EditorShip第6面に広告掲載のある「ヴァンキコーヒーロースター」を営む。三連休初日、店を閉めてまで20周年のお祝いに駆けつけた気概のある男だ。
小島は、6[離]退院式にて「編集を地域に還元する。これが一生の離だ」と宣言。以来「Edit Nagoya」の急先鋒となった小島に「面影座」のふだんの顔を見せてもらった。
(聞き手:梅澤奈央)
▼「面影座」とは?
イシス編集学校・中部支所 曼名伽組の実働部隊。
名古屋市主催の「やっとかめ文化祭」(https://yattokame.jp/)にて、文化濃度の高いディープなイベントを企画してほしいという名古屋市文化振興室の要請を受けて結成された。
▼活動内容は?
松岡校長の「連塾」にあやかり、毎回異なるジャンルからゲストを招き、異なるしつらえでお話いただくトークイベントを企画。
旗揚げは、2016年11月。松岡校長を名古屋に招き、名古屋出身の歌人・故岡井隆先生との対談をセッティング。2019年には、名古屋城本丸御殿にて、安田登氏、いとうせいこう氏、橋本麻里氏によるクロストークも実現させた。(名古屋城公式ウェブサイトにて、「あわれ・あっぱれ・見栄っぱれ ~ワキから見た本丸御殿~」のイベント模様が掲載)
全8講の連塾と同様、面影座も全8回を目指して進行中。
これまでのゲストは次のとおり。
第1講:松岡正剛氏、岡井隆氏(2016年)
第2講:安田登氏(2017年)
第3講:佐治晴夫氏(2017年) *千夜千冊1226夜掲載
第4講:エバレット・ブラウン氏(2018年)
第5講:本條秀太郎氏(2019年)
2023年に完結予定。
▼面影座という名前の由来は?
「面影っていう言葉が好きで……」
校長の名付けではなく、まさかの自称。事後報告のうえ、揮毫を願いでるという暴挙に。そして無許可でTシャツをつくる。
▼活動の手応えは?
2016年の活動開始以来、仲間が着実に増えてきた。「編集」という概念が一般化した印象がある。ひと昔前であれば知る人ぞ知る存在であった松岡校長が、さらに多くの人の興味を惹くようになったのを実感する。
「あのコーヒー屋が松岡正剛の仕事術をまねているらしい」など評判がひろまり、同志が集うことも。集まるのは、出版関係者やデザイナーやロックミュージシャンなど多士済々。
▼どうしてそこまで活動を?
正直、赤字がでることばかり。けれど、「いちばん好きなことはノーギャラでやれ」という松岡校長の方針が脳裏に響く。それを実践する校長の姿や、それを体現する編集学校という奇跡のような集団も見ているから、そこにすこしでもあやかりたい。
損得勘定など考えず、なぜか自分の身を持ち出してしまうのはなぜだろうとふと思う。ふつうならば考えられないような行動原理がとびだす、松岡校長まわりの世界の不思議に翻弄されている。
思い返せば、活動の原点には、6[離]退院後に松岡校長から言われ言葉がいまなお刺さっているのかもしれない。「小島くんは、もっと他者と組んだほうがいい」。絵を描いたり、木版画をつくるなど、ひとりで創作活動をすることの多い自分にとって、その言葉は一座として編集することの意義を教えてもらった。
▼面影座のこれから
現在、2020年11月の「やっとかめ文化祭」にむけてプランニング真っ最中。今年のテーマは、ランボオ。俳人・馬場駿吉さんを招き、ランボオの詩を連句に再編集。さらに、ファゴットや打楽器などの音楽、影絵の動画がコラボする。
11月7日〜15日の期間中、YouTubeで視聴可能。
(URL:やっとかめ文化祭 ナゴヤ面影座 https://yattokame.jp/2020/specialmenu/880.html)
▼こぼればなし
豪徳寺イシス館の1階から2階への踊り場にたたずむこちらのポスター。
これも面影座のしわざだった。松岡校長への誕生日プレゼントとして贈られた。テーマは「もし、面影座が『影向(ようごう』を影絵で公演したら?」 架空の公演を告知するポスターもどき。徹底して松岡校長の仕事をやつす面影座であった。
集合写真撮影:福田容子
面影座パンフレット撮影:小島伸吾
ポスター撮影:後藤由加里
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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