【参丞EEL便#014】組織の理念を自分ごとにする

2022/07/27(水)15:22
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人材開発・組織開発の研究で、ダニエル・キムの組織の「成功循環モデル」が取り沙汰されて久しい。

成功循環モデルで着目すべきポイントは、組織としての「結果の質」を高めるためには、まず「関係性の質」を高めるべきである、と説いたことにある。そうすることで、チームとしての「思考の質」が高まり、それが「行動の質」につながり、やがて「結果の質」がもたらされる。

 

EELでは、企業の「理念」を理解する、もしくは、伝承するための研修を行なっている。
組織によって課題や与件は異なるが、特にすでにメンバーの相互理解や尊重が十分なされている(とされる)組織は、次のレベルの関係を目指すには、個と組織のビジョン・理念の共有や浸透が求められる。そこを支援する。

 

受講者には「日常の中で理念やビジョンに向き合うことや意識することは、あまりありません」と言われる方(特に急がしい中堅次世代リーダー)が、やはり、俄然多い。そこでまずは、理念に向き合う前に、編集の型で「ものの見方」や「わたし」を柔らかくほぐすエクササイズを数回行ってから、組織の「らしさ」を取り出してもらう。

かつて松岡校長は、資生堂名誉会長・福原義春さんの「幹部にこそ面白い考え方が必要」との慧眼から、幹部育成「ミネルヴァ塾」を催した。そこで、茹でたエビをテーブルに一個ずつ運ばせ、これを見ながら「現況の資生堂の特徴を語りなさい」というお題を出したことがある。(千夜千冊1577夜より)

ベイトソンのプロクロニズム講義とまではいかないが、研修でも、生命などの「かたち」と「しくみ」を借りて、「組織のらしさ」をアナロジカルシンキングしてもらう。「うちの組織は横歩きしかしてない」「左右対称ではなく、左脳ばかり肥大化している」などなど、かなり回答が面白い。

 

組織と個人の「物語」にも接近する。これは「英雄伝説の型」を使うことが多く(ぜひブラッシュアップ相談をイシスの先達のみなさんにしたい)、物語を分節化してみることで、その背景にある「思い」や「失ったもの」に気づきがおこる。

そこからようやく「理念」に向かう。その段には、自分なりに組織の「らしさ」や「ありたい姿」への仮説が立ち上がっている。ヒューリスティックに「理念」の言葉や考え方に触れられたと、受講者の声があがる。

 

企業という組織も進化している。変わらずに根本にある価値観や、変化した表現のしかたを見ることで、これまでは印象的にしか語られてこなかったコーポレートミームが見えてくる。これを組織として語り直したり、自分の志とむすぶことが求められている。

EELでは、クオン株式会社がCSR活動として取り組んでいるラジオ番組を書籍化した『企業の遺伝子』を毎年制作している。2022年度版もいよいよ刊行する。この編集プロセスも、どこかでご紹介したい。

 

[編工研界隈の動向を届ける橋本参丞のEEL便]

//つづく//


  • 橋本英人

    函館の漁師の子どもとは思えない甘いマスクの持ち主。師範代時代の教室名「天然ドリーム」は橋本のタフな天然さとチャーミングな鈍感力を象徴している。編集工学研究所主任研究員。イシス編集学校参丞。

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