千悩千冊0012夜★「タイマーなしでお風呂を適温にしたい」40代男性より

2021/02/10(水)09:50
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隊長!さん(40代男性)のご相談:
今年の2月に家を引っ越して、風呂が給湯式に変わりました。お湯を溜めるのですが、ちょうど良い湯舟となるのが7分半。
この時間を使って、最近学んだ多読術を使い”溜読”(湯を溜めている間に読書する)を試みたのですが、毎回、湯船から湯が溢れてしまい、「これはいかん!」と多読術その2”マーキング読書”(パラパラ見ながら気になる所をチェックする)に変えたのですが、今度は思ったより湯の量が少なく、しばらく湯船で「寒い!」っとガタガタ震えなければならない事態に陥ってます。もちろんタイマーを使えば解決できる事くらいは知っていますが、あの大音サッショー率いる多読ジムに学び”いい男(キレつき)”になった、あんどーは恥ずかしくてタイマーなんぞ使えません。イメージとしては、滝のそばで座禅を組んでる宮本武蔵が、殺気を感じた瞬間刀を抜き、一刀のもとに刺客を切り、又座禅に戻るという感じで、読書しているあんどーが、湯舟からの「今ですっ!」という声を感じ、本を閉じると同時に裸になり、素早く湯室に入り、キュッ!と栓をしめ、湯気たちのLOVEを感じながら、静かに湯舟に肩までつかり、無の境地に至る。という感じで風呂に入りたいのですが・・・。
見えない自由が欲しくて、見えない銃を撃ちまくっております。
どうやったらタイマーを使わず、サイコーの湯舟を創生するタイミング(間合い)を正確に計る事ができるのでしょうか?(シーザーと呼ばれる井ノ上番諧獅匠は片目をつぶっても出来る事と存じ上げますので、ぜひ具体的な方法をご教授ください)

 

サッショー・ミヤコがお応えします

「溜読」は新しい方法ですね。そして、お風呂を待つ間の「マーキング読書」。どんなに忙しい人にだって、いつでもどこでも読書のチャンスがあり、方法を持ちかえることで人生はずっとゆたかになることを教えてくれる、素晴らしい取り組みだと存じます。ビバ、多読ジム!
しかし、剣豪のようにお風呂の湧くタイミングを察知する方法は、井ノ上番諧獅匠に譲りたいと存じます。
わたしからは、お題の合間にぜひ読んでいただきたい小説を進呈しておきます。写真は相当古いバージョン(1976年なのでのけぞりました)なのでカヴァー絵が池田満寿夫さんですが、現在流通しているのは和田誠さんの画。翻訳は丸谷才一さん。19世紀末に出版された本書ののほほんとした「らしさ」を際立てていると存じます。

 

千悩千冊0012夜
ジェローム・K・ジェローム
『ボートの三人男』中公文庫

 

 

お風呂の適温になかなか遭遇できないというお悩みを読んで、思い浮かべたのが、この小説でした。主人公は「こっちが熱心に待っていることが、湯沸しに判ると、絶対に沸騰しようとしない」ものだから、そっぽを向いて、友人とお茶の悪口を言い合う、というシーンがあるからです。解説を寄せた井上ひさしさんによると、英国人は「常に叡智と遅鈍の中間に」あり、それがユーモア小説を生む絶妙のバランス感覚につながっているのだ、とのこと。本書はテムズ河での川遊びが主題ですが、その前日譚として主人公が体調を崩し、大英博物館の図書閲覧室で「膝蓋粘液腫」以外のすべての病気の兆候を発見してかかりつけ医に急行したときの処方箋を、隊長!さんにも贈ります。

 

ビフテキ 1ポンド
ビール 1パイント(6時間ごとに服用)
散歩 10マイル(毎朝)
就寝 正11時(毎晩)

 

   小難しいことはいっさい頭に詰めこむな。

 

◉井ノ上シーザー DUST EYE
隊長!ご無沙汰です。また、お元気そうで何よりです。
さて、遅くなりましたが「静かに湯舟に肩までつかり、無の境地に至りたい」という隊長の希望と、「お風呂の湧くタイミングを察知する方法は、井ノ上番諧獅匠に譲りたい」というサッショーの振りにおこたえします。お経の「般若心経」を7分半で唱えるようにしてみてください。
慣れるまではメトロノームを使ってもいいでしょう。般若心経に肖る(あやかる)と、仮にお風呂が熱くても冷たくても「そのような実体はない」と悟りの境地から解決できます。ぜひともお試しください。

 

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  • 井ノ上シーザー

    編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。