【感門DUST】裏の顔をもつ女 山田細香の黒いB面

2020/09/23(水)17:02
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山田細香は裏表のある女だった。

 

細身の体にヨウジヤマモトをまとい、レポーターさながら『情報生命』をテレビカメラにかざす。感門2日目、近畿大学ビブリオシアターでDONDENの紹介をする山田細香は、よく削られた硬い鉛筆のようだった。そのシャープさに、松岡校長は「今日の細香、よかった」と目尻を下げる。

 

カメラのまえで立派な人が、楽屋でもそうとは限らない。落語家だって無口になり、アイドルだってタバコを吸う。鮮やかなグリーンの表紙のエディションをもつ山田、背後にまわってみれば、黄色の蛍光ペンや赤ペンで汚れた司会台本が現れた。

 

山田は前日、自宅でリハーサルを行っていた。台本ができあがったのが感門初日の12時半。そこから同居人を司会の相方・川野貴志に見立て、ふたりでソファに座る。あごが疲れるまで山田は台本を繰り返し、同居人はひたすらうなずく。気づけば感門は終わっていた。本番では進行中の次第変更により、準備原稿の9割がカット。それでもクールに立ちまわる。


B面方眼教室師範代・山田細香の裏面は、鉛筆1本をつぶすほどの準備で黒光りしていた。

 

細香A面

細香B面

(構成・写真:福田容子)

  • 梅澤奈央

    編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
    イシス編集学校メルマガ「編集ウメ子」配信中。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。