高層ホテル最上階の窓越しで月が鈍く輝いていた。
2020年3月11日の夜、平野しのぶ(45[守]師範)と井ノ上裕二([守]師範)はステーキ用鉄板を目の前にしていた。両人ともミディアムレアのヒレステーキをオーダーする。
オポチュニティ・ファンドを生業とする平野は”Capex Queen”と呼ばれていたこともある。Capexとは「資本的価値投資」のことだ。オフィスビルを商業施設にした。ビルごと用途を変えた。法に抵触しない限りカネを使いまくっていた。
平野は語る。
「大事なことは本質を極めること。世の中カネじゃないけどなにかを回すためにはカネが必要」。
メルローの赤ワインが進む。平野は追加でヒレを、井ノ上はサーロインを焼いてもらう。
平野は語り続ける。
「常に真剣を振り回して生きてきた。好きは“数寄”で生きている。数寄の中にはカネも入っている」。「名誉はいらない。肯定は欲しいけどね」。
平野はアートを愛している。石垣島で開催した映画祭を盛り上げもした。前夫のスペイン系アメリカ人とはサルサを踊る夫婦だった。ラテン気質な平野である。
ワインをカベルネ・ソーヴィニヨンにする。
スーザン・ソンタグに憧れた。ソンタグを通じて松岡正剛を知った。イシス編集学校と出会った。知的方面でも平野の進撃は止まらない。
(セイゴオポーズをとる平野師範)
「編集学校のロールって金にならんわなぁ」。井ノ上がわざと水をむける。
「でも編集学校にはなにかがある」。平野がこたえる。
平野にとって不動産開発もアートも映画も編集も「なにか」だ。「なにか」に向けて平野は情熱を蕩尽する。
一年前、平野は42[守]発酵エピクロス教室の師範代だった。担当師範であった井ノ上は速度と勢いのある指南に舌を巻いていた。そんな平野が45[守]の師範デビューをまもなく飾る。
井ノ上は異能師範ぶりに期待をかけている。
二十三時過ぎに区切りをつけ二人は解散した。満月を取り巻く靄(もや)は砂金の輝きを放っていた。
井ノ上シーザー
編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。
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