サステイナブルの矛盾 AIDA第一講 10shot

10/31(土)08:44 img
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「日本はやばい。かなりやばい」

座長松岡が口火を切り、Hyper-Editing Platform [AIDA]が開講した。第一講はAIDAボードメンバーを迎え、座衆とのセッションで問題意識を交わし合う。

ボードメンバーの言葉を引きながら当日の印象的なカットを10shotでお届けします。

 

安藤昭子(編集工学研究所 専務取締役)

[AIDA]プロデューサー。『才能をひらく編集工学 世界の見方を変える10の思考法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を今夏上梓。持ち前の知性とエレガンスでボードメンバーの発言を引き取り、座衆の言葉と言葉のアイダをつないでいく。

世界の流れを見ていても皆さんが学びに来て、持ち帰ってもらうでは間に合わない。社会を変える最前線にいる皆さんとどんな社会を作りたいのか考え、プラットフォームから何か価値を発信していきたい。私たちの力だけでは心許ない。ボードメンバーにはプラットフォームが熟していくところをご一緒していただきたい。

福元邦雄(三菱商事太陽株式会社 代表取締役社長)

ハイパーコーポレートユニバーシティでは幹事を務め、[AIDA]では間匠(Ma-Shou)に就任。真摯な眼差しで問題意識を場に投げかける。

ノーマルってなんだろうと最近考えている。何が健常で、何が障害か。それよりもできることは何か、苦手なことは何か。苦手なものが弱みと組み合わないように考えている。

奥本英宏(リクルートワークス研究所 所長)

福元とともに間匠に就任。イシス編集学校師範でもある。人を包み込むような穏やかなトーンで間匠としての抱負を語る。

[AIDA]は主題を解体し、そこから方法を導き、プラットフォームを構築していくという複雑なテーマを抱えている。そこをボードメンバーやAIDA師範代などいろんな人が支えている。そのアイダと皆さんとの学びをつないで実りあるものにしていきたい。一人一人のプラットフォームができたらいい。

吉村堅樹(編集工学研究所 学林局林頭)

[AIDA]間組統括。『知の編集術』を掲げて編集工学レクチャーを担当。第1講では基礎篇として「地と図」「不足」について講義。ボードメンバーも熱心にペンを走らせた。

編集は不足から生まれる。技法として不足には3つある。「必要だけどない」「いらないからない」「ありえないからない」。ありえないと思っているだけでもしかしたらあり得るかもしれない。ありえないと思っていることが常識やルールに縛られていることかもしれない。

鈴木康代(イシス編集学校 [守]学匠)

編集学校を代表し、[AIDA]ボードメンバーとして参加。熱情的な語り口で編集学校の方法知を[AIDA]に注ぎ込んでいく。

ある中学教師の学衆は編集稽古と出会いプロセスを取り出していくことでフロッタージュが輝いて見えたと言う。デコボコも砂利も傷も見えないところにある。見えないものを見えるようにする。その為には思考のプロセスを取り出したり、先に進むためにはもう一回振り返っていくことが必要なんだと思う。

田中優子(江戸文化研究者・法政大学総長)

[AIDA]ボードメンバー。0721夜『江戸の想像力』。最終セッションでキーワードの1つとなったカットアップについて江戸を「地」にしてその方法を手渡していく。

江戸時代のカットアップは浮世絵に代表されると思うんですけれど、見える景色全部ではなく、注目すべき中心を外して脇の方に視点をずらし、そこを強調して周りをカットする。カットすることによって時間感覚が入り、静止画なのに動画に見える。これは浮世絵が開発した方法なんです。そうすると描かれていない範囲が見える。頭の中で起こる想像力の世界を計算してやっているんです。人間の想像力についてどう扱うか、大事なところだと思います。

中村昇(哲学研究者・中央大学教授)

[AIDA]ボードメンバー。1267夜『ホワイトヘッドの哲学』。19歳で初めて上京した翌日に友人に連れられて松岡の「遊学する土曜日」に参加。そこで初めてホワイトヘッドの名前を聞いたという。

ホワイトヘッドは全ての事象、あらゆる事象、物質も観念も、ミクロからマクロまで、全部アクチュアル・エンティティで説明している。この瞬間のアクチュアル・エンティティに着目すると全世界に辿り着く。一つの世界をクリアに説明しようとしている。世界の一番危険な状態を説明しようとしているのは確か。ホワイトヘッドの名前を初めて教えてくれたのが松岡さんだった。

山本貴光(文筆家・ゲームクリエイター)

[AIDA]ボードメンバー。ISISフェスタ2018春のゲストとして松岡と対談。ゲームクリエイターの視点から「ゲームは失敗が大切。失敗すると仕組みがよくわかる」とゲーム作り、ルール作りについて話を広げる。

どうやって新しいゲーム、ルールを作るかという話が出たがお勧めはちっちゃなゲームを作ること。自分が設定したルールからこんな経験が生まれてしまうという体験ができる。ルールの中には大量の失敗が含まれます。ゲームクリエイターはこうなると失敗だねと想像してゲームを作るがやるとたくさんの想定外も生じる。有事を想定して平時を作るんです。

大澤真幸(社会学者)

[AIDA]ボードメンバー。1084夜『帝国的ナショナリズム』。「将棋に例えていうと我々は詰まされている状態です」キューブラー=ロスの「死の受容モデル」を引き、逆転の見方をひらく。

サステイナブルになることだけが人類の目標。それはサステイナブルじゃないと思っているからですよ。でもみんなそれを否認している。サステイナブルではないと思うことの方が重要です。

将棋で片方が90%勝つことがわかっている時でも稀に逆転がある。負け始めたら最善手を指してもはっきり負けるだけ。負けている方が最善手を指してもただ人類の滅亡に向かって突入しているだけ。むしろ悪手を指す。悪手の指し方は難しい。コンピュータすら思いつかない悪手を指さないとダメ。

いとうせいこう(小説家・クリエイター・作詩家)

[AIDA]ボードメンバー。0198夜『見仏記』。「日本も後進国じゃないか」きちんと絶望するところからもう一度立て直すしかないと放つ。いま周囲でニーズが高まりつつある"小さいコミュニティ"が突破口になるのではと説く。

どれだけ小さいコミュニティで物事を動かしていくか。小さい単位で物事を動かしたいという話があちこちから出ている。大きなダメージを受けないための本能的な何かじゃないかと思う。国家や企業は一斉にやろうとすると失敗が怖くて何も動かない。これが日本のダメさにつながっている。だとすれば小さく分割してそこでいろんなことを実験する。プラスNPOのように違うものと一緒に何かをやるとか小さくダウンサイジングしていくことが悪手を指すための唯一の良い手なんじゃないかと思う。

松岡正剛(編集工学者・編集工学研究所所長・イシス編集学校校長)

[AIDA]座長。「もう一つ今日の話になかったし、僕も言い忘れていることがある」として最終セッションを締め括る。

部長とか社長とか大統領とか首相とか、既存のロールに嵌めて語るのも限界がきていると思っています。江戸幕府が大目付とか奉行など膨大な量のコンセプトやロールを作りましたけどあれに匹敵するものはない。これは切り替えないとダメだろうと思うけどロールの提案がない。席と人と情報の組み合わせを切り替えて何かを運ばなきゃいけないとしたらまずはロールを作らないといけないと思う。それも一人単位で、あるヒエラルキーあるいは分散的でもいいがポジションを持たない動的なロールが必要。入れ替わるロールがあるとヨーロッパロジックにおける解釈ではない説明がつくと思います。

場に投げられた言葉を誰かが受け取り、繋ぎ、次なる連想を生んでいく。終始ボードメンバーが場を圧倒する形で第一講は幕を閉じたが新たなフェーズに第一歩を踏み込んだという一人一人のモヤモヤした高揚感が静かに本楼を包んでいた。

 

第二講は1655夜『感染症の世界史』の著者である石弘之氏をゲストに迎えて、編集的社会像を考えていく。

 


  • 後藤由加里

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