「地」を変えて場を演出する 半想庵エディットツアー

2019/11/12(火)23:10
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 情報には「地」と「図」がある。

 「地」と「図」が組み合わさって情報が形成されている。例えば同じリンゴでもスーパー(地)にあれば商品(図)になるし、ゴミ箱(地)にあれば生ゴミ(図)になる。子供(地)が握ればおもちゃ(図)にもなる。意識的に「地」を変えていければ一つの情報からたくさんの「図」を引き出すことができるようになる。情報を扱う時は「地」と「図」をセットで考えることが大切だ。

 

 今回のエディットツアーのナビゲーターは、この日のために大阪から飛んできた梅澤奈央(42[破]師範代)。ウェブ制作のライターとして企業と社会のあいだをつないでいる。今日はライターからナビゲーターに着替えをして、人と人、本と人、本と本のあいだをつなぐ。

 

 テーマは「3+3=! 見方ゆさぶる編集術 2万冊の本と語らう編集ワーク」。

 本楼と茶室で「地」を変えながら二部構成でツアーを行った。

 

 開始早々、本を使った自己紹介。2万冊の中から、今気になる本を探し出す。続いてはペアワーク。相手の自己紹介を受けて、贈りたい一冊を選びあった。今日の自分と、初めて会った相手。「地」を変えながらたった一冊の「図」を選ぶ。

 

 休憩を挟み、本楼の文学棚を背にしたレクチャー型から、ミニ茶室「半想庵」に「地」を変えて全員車座となり後半へ。

 

 先日開催された本茶会では松岡正剛校長が「半想庵」で茶ではなく、本をふるまって、本を嗜んだ。半想庵の「半」は不足や余白を表す。編集で大切にしているキーワードだ。

 本茶会では編集工学研究所のスタッフでさえ茶室の中に入れてもらえなかったという。特別に今夜だけ開かれた躙口から参加者たちはそろそろと入っていく。

 

 

 最終ワークはお互いに贈りあった本2冊に+1冊選んで「こんな本があったら思わず話が弾む」茶室でもてなす3冊セットをペアワークでつくる。さらに3冊セットに茶室に合う掛け軸の如くキャッチフレーズを考えた。

 

ジャパン×誤読=異議あり

外国人に贈る三冊「ようこそ!幻想ジャパンへ」

 

“流れゆく”と”偶然”という移ろいゆくものから不変的な”太陽”を引き出した。

「まことの編集は涙だ!」

 

2冊とも食べに行く本。そこから”旅”へとつないだ。

「腹凹(はらぺこ)食聞録」

初対面でも食と旅は話が弾む。

 

 初めて顔を合わせた人と「地」をわかちあいながら、本を組み合わせて新たな「図」を作り出した。

 

 梅澤は突如ミニ茶室でやることとなった与件を引き取り、ワークの「地」を変えることで親密感を演出した。

 

  • 後藤由加里

    編集的先達:石内都
    NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025