巣の入口に集結して、何やら相談中のニホンミツバチたち。言葉はなくても、ダンスや触れ合いやそれに基づく現場探索の積み重ねによって、短時間で最良の意思決定に辿り着く。人間はどこで間違ってしまったのだろう。
文体編集術の資料はお渡ししていますが、これが正解ではありません。
あくまでも一つの見方ととらえ、自分なりの新しいメソッドを見つけて、学衆さんに伝えていってほしい。
150回44[破]伝習座。大場健太郎師範による「文体編集術」レクチャーの冒頭の言葉だ。
[破]の最初の稽古「文体編集術」とは。
「守の4つの用法の型を文章として構造化していく。これが文体編集術。
伝えたいメッセージを、文章というメディアで伝えるためにメソッド=型がある。」
ただうまく伝えられるだけでいいのか。文体編集術はそれだけに止まらない。
「文章によって既知の見方を破ったり、新たな視点を獲得していくことこそ挑んでほしい。」
***
レクチャー後半では、木村久美子月匠(以下:木村)と原田淳子学匠(以下:原田)の対談を中心に、お題についてこのようなやり取りがなされた。
●1-02「創文の基礎〜いじりみよ」
ーー木村:
創文には3つのカマエがある。
1.構造的であってかつ展開的な文章になっているか
2.発見があるか(意外性、新鮮味があるか)
3.読者との絶妙なコミュニケーションを図っているか
その上で、「み(見方づけ)」で視点の切り替えが起こすことが大切。
この切り替えの組み合わせから関係性を見つけること、論旨を組み、文章として仕上げる。
これができれば(千夜千冊『文体練習』の)レイモン・クノーのように100もの書きかえにもつながっていく。
ーー原田:
どれが「い(位置づけ)」で「じ(状況づけ)」か、などと正解型にさせないこと。
もちろんずれていたら修正は必要。
「よ(予測づけ)」を驚くべき「よ」でなくても構わない。
例えば同じテーマを笑いの方向に動かしたりするのも立派な「よ」。
むしろ「り」から「み」の視点の切り替えから教室全体で多様な「よ」が出てくれば。
●1-04「インタビュー編集術」
ーー木村:
今期お題改変を行った稽古の一つ(稽古お題も常に編集・更新されている)。
「夢中になっていること、縁を感じること、子供時代の思い出」を問うことにした。
夢中になっていることは「数奇」、縁を感じることは「肖り」、子供時代の思い出は「幼な心」。
どれも松岡校長が大切にしている3つの視点もある。
松岡校長の雑誌『遊』も様々な人へのインタビュー集だった。
対談の方法として松岡校長「相手に沿う」「いいかえをしながら対話をする」「既知から未知の領域へ入る」を大切にしていた。
既知から未知へ向かう方法として「数奇・肖り・幼な心」を用いて欲しい。
嬉しいアンサーを交わし合うためにどういったQを出すかが大切。
ーー原田:
インタビューをするからには、身近すぎない未知な方から、1時間以上たっぷり対話を重ねて欲しい。
「どう変化をしたか」に注目してヒアリングして欲しい。
幼な心だったら、その出来事がどのように変わり、現在に繋がっているかを引き出すこと。
●1-07「セイゴオ知文術」
原田:
初回答では、本を読んだことや初稿を仕上げたことを評価した上で、師範代が共読し、読み方指南に向かう。
初稿をそのまま推敲するのではない。
一緒に読みつつQを投げることで、新たなメッセージを創発させる。
木村:
過去のアリストテレス賞の講評にほとんどの方法が眠っている。そこを読み解くだけでも相当なヒントになる。
師範代との稽古を重ねてうまれた学衆のみなさんの知文を読めるのを、本当に楽しみにしています。
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
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