入門と進破、そのきっかけは?

2020/09/21(月)07:30
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 きっかけはコロナだった。

 

 外出自粛によって旅行にいけない、飲み会も参加できない。思わぬ時間がぽっかり空き、彼女は入門を決めた。
 

 怒涛の如く降りてくるお題に怯み、焦り粛々と自宅学習する日々。リモートワークの寂しさを師範代からの指南とエールに癒され、励みにした日々。

 

 少しずつ外の空気を吸う時間が増え、街を歩いてみると注意のカーソルがあちこちに動く。視点の変化に驚き、別様の可能性を察知する自分によろこびを得る。

 

 【守】の稽古は後半の用法3の後半からボリュームが増す。「たくさんのわたし」や「ミメロギア」に苦戦した言葉たちは「犬と女とカッティング」や「レシピを真似る」で徐々に自他への興味を集め、アウトプットを自然に楽しんでいた。それでも【破】は高嶺の花、いやハードな登山。出来るはずがない。

 

 次のきっかけはお題だった。

 用法4の「バナナと魯山人」の回答に対して師範代からは「物語講座も薦めたいです!」と太鼓判を打たれ、‶わたし、もしかしていけちゃうかな?”と挑戦心が芽生えた。

 

 ″もしかして、いけちゃうかな” その火種が学衆そして師範代の編集魂を焚きつける。20年間、そうやって編集学校は歩んできた。

 

 感門之盟で、彼女はzoom越しに師範代へメッセージを送った。
 「師範代が熱心に指南してくださったお陰で破に進むことにしました!」

 

進破に迷うみなさん、やらずに後悔より、やって後悔をお薦めします。
ISISの庭で再会を願っています。

  • 増岡麻子

    編集的先達:野沢尚。リビングデザインセンターOZONEでは展示に、情報工場では書評に編集力を活かす。趣味はぬか漬け。野望は菊地成孔を本楼DJに呼ぶ。惚れっぽく意固地なサーチスト。

コメント

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山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025