師範代は鬼になる 学衆にムチふるう仏の心とは【47[守]卒門直前】

2021/08/21(土)00:34
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「絶望的な状況です」あるカフェで彼女は声を絞り出した、突破2日前のことである。

学衆Hは、たしかな力量と教養の深さで仲間から羨望を集めていた。しかし突破を目前に、姿を消した。「ご体調だけが心配です」「無理に無理を重ねていませんか」「可能であれば、Hさんの美しくて繊細で、かつスッと染み込んでくるようなご回答を拝見したいです」
仲間からつぎつぎに声があがる。

 

深夜2時、Hは感謝の言葉とともに現れた。これまでなんとか土日に時間を割いて稽古していたが、ここへ来てプロジェクトが重なり連日連夜の出勤。突破期限の週末も出張。悔しいけれど、今回の完走は断念する。Hは仲間へのエールで締めくくった。

ときにイシスの師範代は鬼になる。その日の晩、師範代品川未貴(46[破]互次元カフェ教室)は言い放った。
「性懲りも無く、この状況で何とか方法がないものかと考えてみました」回答スケジュールを提示したのだ。
そして迎えた突破日当日、Hは夕方から締切2分前まで、5時間半を駆け抜けた。
「当の本人が諦めているのに、師範代がこれほどまでに考え粘って下さっている、ということにもう感激してしまい、頭が下がる思いで、途中棄権しかかったマラソンの最後、ヨタヨタ走りながらゴールを切ることができました」と涙をこぼした。

異次元の激走を支えたのは、品川の鬼手仏心だった。

 

 

その激闘から2週後、47[守]も8月22日に卒門期限を迎える。
8月19日夕刻、近大学衆が集う最後の交流会が開催された。彼らは事前選抜をくぐり抜け、「4ヶ月を全うできる」と太鼓判を押された猛者ばかり。しかし、きちんとした回答を出したいという真面目さゆえに足が止まる者もいる。どうやって稽古を進めたらよいのか、質問があがった。
「イシスとは関係のない友だちに、『お前だったらどう考える?』と聞いてアイデアを分けてもらう」(近大番川野貴志
「師範代や師範をうまくつかう」(近大番・47[守]番匠 景山和浩)などぞくぞくとヒントが手渡される。
「わからなかったら、師範代に『わかりません』と声をあげればいい。そうしたら寄ってたかって、助けてくれるから」と。

 

▲Zoomで顔を寄せ合い、卒門の先まで見通した近大学衆たち。学衆M(縞々BPT教室)を筆頭に「[破]に行きたい」という声も多い。


ひとあし早く卒門した学衆K(47[守]オブザぶとん教室)が口を開いた。
「うちの師範代もそうでした。ひさしぶりに回答したときも、師範代がすごく歓迎してくれて、その姿勢に救われたんです」

[破]の現場で、師範新井陽大は静かに語った。
「挫折したり、がんばりきれなかったり、がんばってもうまくいかなかったりしたときに、そこでシャッターを閉めるのではなく、リベンジのチャンスを何度でも与えてくれるのが再生の女神たる『イシス』を名に掲げた編集学校です」
「『不足』から始まるのが編集。悩みも挫折もない、万全・健康な態勢で臨める超人だけを受け入れるような、冷たくてつまらない学校ではありません」

 

いつでも、どこでも、何度でも。
師範代たちは待っています。

――46[破]あたりめ乱射教室師範代森本康裕

 

卒門まであと48時間、21教室でドラマが起こる。

 

 


  • 梅澤奈央

    編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。

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