巣の入口に集結して、何やら相談中のニホンミツバチたち。言葉はなくても、ダンスや触れ合いやそれに基づく現場探索の積み重ねによって、短時間で最良の意思決定に辿り着く。人間はどこで間違ってしまったのだろう。
編集は変化なのである。編集はつねに変化しつづける「そこ」にさしかかって仕事をする。(中略)「かわる」と「わかる」は、必ずや「そこ」においてこそ成立するもので、「そこ」にさしかからないでは何もおこらない。
松岡正剛&イシス編集学校『インタースコア』P.17より
イシス編集学校の入門者はこれまで3万人を優に超える。その全員が必ず最初にまたぐのが[守]の門だ。その道中のお守りに『知の編集術』とともに手渡される一冊に『インタースコア』がある。500ページを超えるボリュームに、これから何が始まるのかワクワクしながら開講までの日々を過ごした人も多いだろう。

4月26日の正午、「これより第47期[守]基本コースを開講いたします!」という通知を合図に、編集稽古の門が開いた。
途端に飛び込んでくる「勧学会」「学衆」「師範代」といった聞き慣れない言葉。仕事帰りにメールチェックをすると、師範代からの投稿の連打に、名前しか知らない教室メンバーからの点呼や回答の数々。PCやスマホ越しに周囲の様子を見回したくなるような気持ち。こうした連続にとまどいつつも、門の先で広がる未知に期待を寄せている人も多いだろう。
そうした「とまどい」や「未知」こそが、編集の起点たる「そこ」にさしかかる編集の契機なのだ。
あえて自分をとまどいのなかに置いてみる勇気が、私たちを「次」に導いてくれます。
(同上 P.293より)
イシス編集学校で「そこ」に向かう一番の方法は、なんといっても「お題」だ。「ゲーム感覚でサクッとお楽しみください」「5分を目安に軽快にね」「肩慣らしのつもりで」「まずはウォームアップのつもりで」と、師範代からもお題回答への一歩を後押しする言葉が、学衆におくられる。
イシスのしくみの基本である「問感応答返」の「問い」は、すでにお題から始まっている。お題を読むと何かしらの気持ちが動くはずだ。「これってどういう意味だろう」「こういう使い方ができそう」など感じることがあふれでたり、「思ったよりもうかばない」「意外と難しいな」などの想定外にとまどう事態も起こる。そうしたものを応じつつ、回答として返していく。このプロセスの中で、変化=編集が起こっていく。こうした問感応答返を、師範代は編集術を通じてひもとき、指南として学衆に返していく。
こうして文字を打っている間にも、あちこちの教室で、「そこ」への一歩を踏み出した学衆に師範代が指南を手渡しはじめている。
編集学校はめっぽうおもしろい。どんな学習体験にも似ていない。(中略)ただ、本書を手にしただけで編集学校を覗いたことのない諸君には申し訳ないが、このおもしろさは「そこ」にさしかかってもらわないかぎりは、伝わりにくい。
(同上 P.23より)
『インタースコア』で[守]のページにつけられたタイトルは「型の原点 稽古の原郷」。
2000年の開校以来、型の原点 稽古の原郷でありつづける[守]の編集稽古は、今はじまったばかりだ。
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
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