【破 物語編集術体験ツアー 2月12日】 ストーリーテラーになろう!~型から跳び出す物語

2023/01/27(金)00:23
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 世の中忙しく、みんな時間に追われ、映画を早送りで見る人が増えていると聞く。娯楽のための映画を早送りで見るくらいなら見なくていいんじゃないかと思うのだが、それでも見たいのか。…というところに一縷の希望を感じる。忙しいから物語はいらない! のではなく、忙しくても早送りしてでも物語が必要なのだ、きっと。

 

 物語とは、フィクションで、つまりは作り話で、絵空事で、仕事や勉強に直接役立つものではない。小説を読んだり映画を見たりすることは、ひたすら愉しむため、つまり遊びなのである。万事効率化優先の世の中にあって、早送りしてでもストーリーを楽しみたいというのは、まだ人間がホモ・ルーデンスである証ではないだろうか。

 

 そう、物語を聞くこと読むことは、人間の根源的な喜びだ。そして物語を創ることは、究極の遊びだろう。世の中にあふれる物語、オペラ・バレエはもとより、「スター・ウォーズ」もディズニーアニメも、もとは古代中世の神話や伝説や昔話である。それが朝ドラのヒロインにも、ジブリの小さき者にも感染している。能や歌舞伎のレパートリーに、芥川龍之介の小説にも、日本中世の伝説や説話の着替えバージョンがいろいろある。人間は同じような話と知りつつ、新たな装いの物語を求めつづけている。

 一方、歴史(ヒストリー)上の事件が、物語(ストーリー)になってきたケースも枚挙にいとまない。義経も家康も赤穂浪士も、何度も何度も芝居・映画・ドラマになって甦る。ヒーローのカッコよさを、英雄の無念を、よみがえらせたいから何度も創られるのだろう。

 

 物語という絵空事は、衣食住に次いで必要なものなのかもしれない。だから編集学校では物語を重視する。大事な知恵や出来事を伝えるために、それを仲間と共有して、いつまでも覚えているために、太古の昔から人は語り続けてきた。現代には現代の語りがあり、ときに騙られてだまされたりもするけれど、それくらい物語は巧妙にもなるし、瀬戸際でのコミュニケーションを決することもある。

 [破]では、学衆が3000字の物語をこしらえる。一つのワールドを設定し、キャラクターを生み出し、彼らを動かしてストーリーを運んで行く。それこそ映画にしたらよいような名作が生まれることもある。そんなことができるのか? 尻込みしそうな人にこそ、トライしてもらいたい。物語にも「型」があるから大丈夫!!!

 

 ということで、毎期の終わりに恒例のエディットツアーを開催する。[破]番匠:野嶋真帆と、46[破]47[破]で師範をつとめ現在は多読ジム冊師の新井陽大がナビゲーターに立つ。

 

 左から紹介しよう。のっじーこと野嶋は浪速のグラフィックデザイナー、4[守]で入門し、物語講座の立ち上げにもかかわった。[破]伝習座の物語レクチャーは、手練れでありながら、毎期、新鮮な発見をもりこみ、校長が楽しみにしているほど。バニーこと新井は、場に出た話題にたちまち幾重にも関係線を引き、本と見方をどかどか重ねる歴史教師。ベテラン師範や評匠に交じっての仕切りも見事なものである。(右は筆者・原田。3人が揃った47[破]第2回伝習座の模様)

 野嶋番匠が考案したワークでは、「型」を使うことによって、思ってもみなかった物語が飛び出すフシギ体験ができる。ストーリーテリングできてしまう「型」の威力を感じてほしい。


[守]学衆はもちろん、未入門の方も歓迎!

■日時:2023年2月12日(日)14:00 – 16:00
■費用:1,100円(税込み)
■会場:オンライン(Zoomを使用)
■人数:先着20名様まで

 

詳細・お申込み▶エディットツアー2月12日

  • 原田淳子

    編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025