組み合わさって立ちあがる 新たな「わたし」―49[守]

2022/07/07(木)20:44
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 「みなさん、焼きマシュマロサンドイッチってご存知ですか?」と八段プラモデル教室のフロントランナーの一人である学衆Hが元気よく問いかけた。汁講でのお菓子に見立てた自己紹介「おかしなわたし」の一コマだ。「普通は考えないマシュマロの食べ方なのですが、意外とマッチするんです。周りの人が持つ印象とその真逆の印象、そういうバラバラな要素が組み合わさっているのが私です」と語り、「私は焼きマシュマロサンドイッチ」と言い切った。

 

 師範代の小松原一樹は、この日のために、学衆たちに「おかしなあなた」を用意していた。「『焼きマシュマロサンドイッチ』なHさんには『フォンダン・オ・ショコラ』を贈ります」と応じる。ケーキ生地からチョコレートが溶けだすように、多彩なアナロジーが広がる稽古ぶりを見てのことだ。Hは、お題021番の「秘密基地からBPT」で、三つもの回答を届けた。「親友とのおしゃべり」から「遺伝子工学の行方」に到達するまでの間、「甘く芳香な日本酒の香り」「森羅万象という日本的思想」「著名な生物学者の本」とプロフィールが幾重にも揺らいだ。バラバラなあれこれが組み合わさって新たなイメージを生み出した。「豊かな連想を活かして、更に発想力を高めてほしい」と師範代が期待を寄せる。

 

 自らの「おかしなわたし」と師範代からの「おかしなあなた」が合わさって、新たな「わたし」が立ちあがる。汁講後、第2回番ボーが始まると、「ちょっと緊張しますが、まずは番ボー2の一発目いきます」とHは教室の先頭を走る。「焼きマシュマロの着ぐるみを着て、師範代に見守っていただきながら存分に遊ぼうと思います」の宣言通り、出題から4日目で既に4回の再回答。連想が止まらない。

 

 「総力戦で参りましょう!」と学衆Tも応える。仲間の間で競いが始まった。八段プラモデルの工作室は、今日も意気軒昂だ。

 

  <2022年6月25日(土)八段プラモデル教室第1回汁講参加者>

  皮はパリパリ中身は甘いシュークリームな武内一弘さん、粘り強さはしっとり最中並みな
  舟本栄子さん、
焼きマシュマロサンドイッチな半田薫子さん、ちょっと変わり種をつつき
  たいホッピングシャワーなMさん、
鈴木康代学匠、小松原一樹師範代、師範阿曽祐子

  • 阿曽祐子

    編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。 「阿曽祐子の編集力チェック」受付中 https://qe.isis.ne.jp/index/aso

コメント

1~3件/3件

若林牧子

2025-07-02

 連想をひろげて、こちらのキャビアはどうだろう?その名も『フィンガーライム』という柑橘。別名『キャ
ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
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