閉じるときは開くとき―50[守]教室施錠

2023/03/12(日)01:01
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  ギィィ
     パタン 
        カチャリ。

 

 50守全教室に鍵がかかった。
 開講の10月24日から17週間、38のお題を真ん中に回答と指南を交わし、インターネット上の一角にあるスペースが、忘れられない教室になっていった。

 

 モモめぐむ教室師範代の中村裕美は、学衆に語りかけた。

今ぴんとこないことも、時が違えばハッとする。
それが明日なのか、一か月後なのか、一年先なのか、分かりません。
だから時々様子を見てやってください。タネが芽吹いた瞬間を。
これから先、ふと迷うことがあれば、立ち寄ってみてくださいね。
教室はいつでも閲覧可能です。

 

 ミネルバ・ロードス教室の師範代、黒田領太はチームラウンジでつぶやいた。

熱い稽古をここでしてきたんだ、もうこの時間はこないんだと思うと胸が熱くなります。

 終わりという区切りがあるから、これまでの道のりを振り返ることができる。

 

 傑作ペパーランド教室の西村洋己は「私はこの指南を通して師範代になっていくことができました」と学衆に感謝し、ここいら普門教室の大塚剛史は「未完成を恐れずに、さらなる編集に向かっていってください」と、代々ビオトープ教室の森川絢子は「不足の発見は、可能性の発見である」と学衆を勇気づけた。

 

 施錠された教室はもう動かない。編集稽古の初心が結晶化することで、各人の胸の中の面影となり、次の扉へと向かえるのだろう。

 

    過ぎし扉と新たな扉に
        鍵を。

 

 釣果そうか!教室師範代、稲森久純が施錠と同時に放った言葉だ。そう、一つの扉を閉めた鍵は、次の扉を開くことができるのだ。
 この春、50[守]を巣立った面々は次なるさしかかりへ。どんな鍵穴を見つけるのだろうか。
       


◆「教室」を体験したいなら ― 51[守]申し込みへ
 [守]基本コース(51期)
 2023年5月8日~8月20日
 https://es.isis.ne.jp/course/syu

 

◆[守]に続く扉なら ― 50[破]申し込みへ
 [破]応用コース(50期)
 2023年4月24日~8月13日
 https://es.isis.ne.jp/course/ha

  • 石井梨香

    編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025