ひと雨ごとに春が来る。
2日後に感門之盟が迫った3月11日、16時すぎ。リハーサルを控え、学林局メンバーが総掛かりで式次第の最終確認にあたっていた。林頭・吉村堅樹が、登壇する師範や師範代のモノマネを披露してうれしそうにしている。本番直前にしてはめずらしく、ひと足早い春のようなうららかな空気だった。
しかし、雲行きは一瞬で変わる。本楼のにじりぐちに、校長松岡正剛がふいに現れたのだ。ぐるりと見渡すなり、「屏風はこの位置でいいのか」「カメラは」「司会台は」「次のコーナーは」
矢継ぎ早に繰り出される校長の問い。すべてによどみなく答える統括吉村。演出意図も工夫も十分にある。
それでも松岡はひとりごちる。
「なんか足りないんだよな」
吉村が黙った。司会にあたる律師・八田英子も立ち尽くす。局長・佐々木千佳が、本楼と学林堂の階段を大急ぎでのぼりおりする。マスクをずりおろし、無精ひげをさわるのは参丞・橋本英人だ。
「『Inform共読区』だろ」
ベースに立ち戻っては、昨年8月末に代官山で行われたオンライン講演会「千夜千冊の秘密」でのしつらえや、バラエティ番組での明石家さんまの振る舞いなどを例に挙げ、本楼に「ないもの」をサーチしてゆく。
「書はここに」「本もいるだろう」「パネルは印刷して。あとは……」
つぎつぎに増えていくツールたち。松岡はそれの使い方までは言及しない。与件だけを託すのだ。
さなかに松岡がふと気づいた。
「おれ、ここにいるよ」
開幕初日、冒頭での校長挨拶の演出を思いついたようだ。
「そこですか!」
テクニカルをまるごと引き受けるテレビマン中島麗が、思わず叫ぶ。
「それは……」小森康仁がうめき声をあげる。それを見てうれしそうな衣笠純子。
果たして、校長からのお題をクリアできるのか。
そして、松岡はなにを企んだのか。
すべては3月13日13時に明らかになる。
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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