43[破]の合同汁講の時の話である。まだ本楼で汁講が出来ていた頃の話だ。
なぜかその場に、まったく関係のない師範代が来ていた。学衆からすると「あなた、誰?」という話である。聞くと、前日、自分たちの汁講があったという。
「みなさんの汁講に興味があったので、つい」
そんな理由だけで、普通、他の教室の汁講に足を運ばない。
自分の「数奇」に正直で、少しでも興味があれば未知に踏み出すことを微塵も恐れない。労も苦にしない。誰に何と思われようが構わない。まず体を動かしてみる。フラメンコだって踊ってしまう。 14季[離]を退院した直後に、師範代や錬成師範の経験者ながら、今期、47[守]を再受講して卒門。こんなことを平然とやってのけるのも納得だ。
誰であろう、本日の司会者、嶋本昌子さんその人である。
実はジャイアンは、33花伝所で錬成師範としてお世話になっている。愛情たっぷりの指導に、何度泣いたことか。嶋本錬成師範の指導は、喩えるなら「ハグ」だ。ギュッと抱きつかれるので、その幸福感に油断すると窒息するのだが……。
ジャイアンが嶋本錬成師範から学んだことは、その回答を好きになること、学衆を愛することだった。
今の時代、他者を愛することはムズカシイ。ところが嶋本さんは平然とそれをやってのける。なぜできるのか。ずっと疑問だったのだが、今日の司会ぶりでようやく得心した。
「すっかりファンになってしまいました」
この言葉が何度飛び出したことか。隣にいる司会者(至宝)から、「またファンになってしまったんですね」と皮肉を言われても動じない。なぜなら惚れることこそ、嶋本さんのダンゼンだからだ。嶋本さんはその人の「ダンゼン」を瞬時に見つけて、すぐに好きになる。心底、惚れる。きっとこのあと、誰かのために涙するのだろう。
ああ、「全部」を愛する必要はなかったんだ。「部分」を抱きしめればいいんだ。
指南とはこういうことなのか。
嶋本昌子さんの司会から、あらためて指南の基礎を教わった。
……ところで嶋本さん、またハグしてもらえませんか?
角山祥道(ジャイアン)
編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。
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