中二病という言葉があるが、この前後数年間は、”生きづらい”タイプの人にとっては、本格的な試練が始まる時期だ。同時に、自分の中に眠る固有のセンサーが、いっきに拡張し、世界がキラキラと輝きを放ちはじめる時節でもある。阿部共実『月曜日の友達』は、そんなかけがえのない瞬間をとらえた一編。
その日、若き音楽家はtoy pianoを携えてかけつけた。
エディットツアーのテーマタイトルは<月から発見☆編集の世界>、「月光に肖ったワークを」と天の啓示があったとか、なかったとか。
「月にあやかって、これから2時間、既知と未知を行き来してみよう」。春光が差し込む春分の日の本楼で、上杉公志師範代の32の鍵盤による「月光ソナタ」がたちまち別時間へと誘い出す。

参加者は、自らを楽器に見立てて、「打てば響きたい琴」「あたかもなりひびいているようなエアギター」「ジャズグルーブっぽい鍵盤」「不協和音ギリギリのピアノ」などと、声を弾ませる。音楽家は自分の曲作りのプロセスにのせて、みずみずしく編集術を、イシスを語り始めた。

そして、「月」である。
「ここでは深く触れないですけど」と何度も前置きしながら、音楽家は音階から音調の「らしさ」までを示すように東西のルナティックスを差し出していく。黄色、丸い、満ち欠け、満ち引き、雨、うさぎ、蛙、アポロ…知らせるもの、思い出させるもの、語りかけてくるもの…参加者は月のイメージを動かしながらサークルを広げ、「月はわれわれの未知の記憶を照らしている」というフレーズをたよりに、2万冊が並ぶ本棚の光景を楽しみながら、月から連想した一冊を選びとった。
「既知の情報を未知の情報へと変える月」が潜むという本のページをめくり、合い向き合って見つけた月を交わし合い、その調べを繋いでみる。アイダに置くのはtoy piano。音楽家が “ 未知を受け入れる型 ”を示せば、全員が連想エンジン全開で語り始める。何かに憑かれでもしたようにインとアウトを総動員させることが、この日の月狙いだ。


最後に音楽家が用意したのは、千夜千冊625夜『内なるミューズ』。「デノミネーターの消息を一緒に探しに行きませんか」と、一人ずつにイシスへの切符を手渡した。
**BGMはToy Pianoが引き出す内なる調べ
uesugi_toypiano
◆次回のエディット・ツアーは4月4日 PM2時スタート、乞うご期待!
田中晶子
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コメント
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2025-10-20
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