遂に20冊!エディション『仏教の源流』発刊

2021/04/27(火)08:37 img
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 仏像の横に『仏教の源流』。地中から湧いて出た地湧の菩薩さながらに、「空」の字紋のエディションと仏像写真を並べてみた。『本から本へ』『デザイン知』で口火を切った千夜千冊エディションも、『仏教の源流』でとうとう20冊目となった。
 
 記念すべき20冊目の『仏教の源流』は、ブッダ前・ブッダ中・ブッダ後の三間連結が章立て。ブッダが誕生した背景から、ブッダの思想と遍歴、ブッダ寂滅後の仏教が概観できる。その目次を紹介しょう。
 

前口上

 

第一章 古代インドの哲学

 中村元『インド古代史』1021夜
 木村泰賢『印度六派哲学』96夜
 『ヴァガヴァッド・ギーター』1512夜
 宮元啓一『インド哲学 七つの難問』1645夜
 
第二章 ブッダの目覚め
 ハマラヴァ・サダーティッサ『ブッダの生涯』1679夜
 リチャード・ゴンブリッチ『ブッダが考えたこと』1757夜
 並川孝儀『ブッダたちの仏教』1686夜
 立川武蔵『空の思想史』846夜
 
第三章 仏典の編集的世界像
 三枝充悳『大乗とは何か』1249夜
 梵漢和対照・現代語訳『法華経』1300夜
 鎌田茂雄『華厳の思想』1700夜
 長尾雅人 訳注『維摩経』1530夜
 
第四章 中国仏教の冒険
 沖本克己・菅野博史 他『仏教の東伝と受容』1430夜
 森三樹三郎『老荘と仏教』1437夜
 横超慧日・諏訪義純『羅什』1429夜
 リチャード・C・フォルツ『シルクロードの宗教』1428夜
 菊地章太『弥勒信仰のアジア』1313夜
 礪波護『隋唐の仏教と国家』1436夜
 保坂俊司『インド仏教はなぜ亡んだのか』820夜
 
追伸 菩薩とアナザースタイル

 
 前口上はいきなり「仏教を抹香くさいものにしたままではいけない」で始まる。葬式や法事や儀式のなかに仏教を閉じ込めていたのでは、つまらないというわけだ。この一冊をどう味読するか。一つには、六派哲学、六師外道、十大弟子、龍樹、維摩居士、鳩摩羅什とブッディズム・スターたちが次々に紹介される。彼らを昔のお偉方としてではなく、編集的先達や理想的人間像モデルとして、その思想や行動を捉え直したい。
 もう一つは、追伸の「ブッダは世界を「苦」とみなして、「一切皆苦」「諸行無常」と言い放ち、世界は「縁起」と「空」で成り立っていると説いた」という言葉からヒントを得たい。世界を「関係」として見て、その関係は空じることもできれば、あらためてつなぐこともできると言い換えることもできる。イシス編集学校的に言えば「ワケルとワカル」「ワカルとカワル」だ。ここにブッダのラディカルとアナーキーがある。追伸の最後では「菩薩の二十一世紀アナザースタイルが待望される」と締めくくられるが、現代社会や世界の見方を空じて縁起する編集者が必要だということだろう。これはもう、今読まずしてどうするという必読のエディションと言えるのではないだろうか。
 
 エディションが20冊に達したことを記念して、全国の書店では5月中旬頃から「エディション20冊フェア」が開催される予定である。そこでは松岡正剛のポスターとともに、校長著作からエディションで取り上げられている書籍も並ぶらしい。さらには、伝説のホンゴジラによる書店でのワークショップも噂されている。緊急事態宣言によって事態は予断を許さないが、『仏教の源流』を耽読しながら、楽しみにさらなる続報を待ちたい。
 
吉村自作の仏像コラージュにエディションが立つ
 

  • 吉村堅樹

    僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。