【このエディションフェアがすごい!12】丸善 京都本店

2021/06/23(水)08:00
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■ これぞ「知祭り」!

 

 お待たせしました。松岡正剛の故郷・京都に、2021年6月21日(月)、いよいよ「知祭り」の狼煙が上がりました。言わずと知れた、丸善 京都本店。梶井の檸檬爆弾が置かれた、あの舞台です。

 

 丸善 京都本店のエディションフェアの「すごい!」ポイントは、ずばり関連図書のキュレーションです。つべこべ言うより、本の並びをお見せするのが一番でしょう。店内最大の特設コーナーに、巨大ポスターの存在感。地下2階レジ前のフェア棚に、エディションを結節点として並ぶ本たちの骨太さ、いかつさを、まずはご覧あれ。

 

『文明の奥と底』の隣に、ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』、フロイト『モーセと一神教』が並ぶところまではあるとして、そこからコンラート・ローレンツ『鏡の背面』、さらにはルネ・ジラール『世の初めから隠されていること』までが面陳されているのには驚きます。

 

 

『大アジア』の棚にゆけば、アンドレ・グンダー・フランク『リオリエント』と安彦良和『虹色のトロツキー』が隣り合わせ。

 

 

『神と理性』にいたっては、左にエドマンド・バークの『崇高と美の観念の起原』が複数並んでいるかと思えば、右にはヴィーコ『新しい学(上・下)』がそれぞれ5冊ほども積み上げられています。

 

 

なかでも白眉は、やはりこの一群。核となるエディションは『編集力』。フーコー『知の考古学』にヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』、タルド『模倣の法則』とベンヤミン『パサージュ論』全3巻が並んで平積みされた挙げ句に、スタフォード『ヴィジュアル・アナロジー』がずらりと並ぶという、めくるめく選書ぶりです。

 

 

■ もともと『エディション』は売れ筋

 

 この“攻めた選書”の意図や如何に。と、思う人も多いことでしょう。ですが、じつは丸善 京都本店では、これが「売れ筋」でもあるのです。本フェア担当の森川佳美さんに、選書の意図をお聞きしました。

 


ご存知のとおり、京都には大学が多くあります。学生さん、大学の先生、研究者の読書欲は、ウェブ時代の今も旺盛です。なかでも当店は、専門書・学術書・洋書など、他の書店にあまりない専門性の高い本を揃えていることが特徴です。今回は、専門書フロアである地下2階のフェア棚ということもあり、親しみやすい本というよりも、知的好奇心をくすぐる「挑戦したくなる本」を多めに構成しています。松岡さんの言葉で編まれたキーブック解説があることで、知ってみたい気持ちに、さらに火がつくしかけにしかけになりました。


 

 京都というトポスだからこそ成立したのが、丸善 京都本店の、このエディションフェアと言えます。

 


当店では、そもそも『千夜千冊エディション』は、よく売れるシリーズ。新刊が出るたびに好調に動いています。ですから、最初にお話を聞いた時点で「この企画はいける」と確信し、一番大きなフェア棚を、即おさえました。じつはこの選書も、『エディション』を軸にご提案いただいたブックリストあってのもの。そこから、古典、定番を含め、難解な専門書やハードカバーもあえて織りまぜ、当店のお客様に響く本をと考えました。


 

 

松岡正剛著書コーナーでひときわ目を惹くのが、どどんと鎮座する求龍堂『千夜千冊全集』の全巻セット。『エディション』既刊全巻、記念冊子はもちろん、こういうものをさらっと置いてしまうのが丸善 京都本店の「すごい!」ところです。

 

文庫・新書担当の森川さんのおすすめ本は? 「まずはエディションシリーズから1冊。発売されるやどんどん売れたのが記憶に新しい『サブカルズ』。そして、この機会に挑戦してみていただきたい、トマス・ピンチョン『V.(上・下)』。最後は、当店鉄板人気のヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』。実は私自身もまだ未読なのですが、ぜひ読んでみたい、知ってみたい一冊です」

 

しびれる選書が「すごい!」丸善 京都本店のエディションフェアは、7月31日(土)まで。今年は祇園祭の山鉾建ても再開します。知湧き本躍る、知の雨を浴びに、ようこそ、夏の京都の知祭りへ!

 

 ※ 好評につき会期延長! 丸善 京都本店のフェアは 8月7日(土)まで引き続き開催中です。

 

梶井基次郎『檸檬』コーナー

 

 

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