一語一合のアクロバティック 未知奥エディットツアーがコラージュする【ツアー@東北】

2021/02/08(月)23:00
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「編集文化の超名人・松尾芭蕉にあやかりましょう」。

 

イシス東北支所(未知奥連)の鈴木康代連長が号砲を鳴らした。2021年2月7日の未知奥エディットツアーのことである。オンライン上には、8名の受講者と未知奥連メンバーが集った。

 

 

▲ワークショップの光景。尾崎伸行さんの“サザン語り顔”に注目。

 

ワークショップは、『奥の細道』で詠まれた芭蕉の俳句を「いじる」ものであった。「言葉のコラージュ」としての俳句をベースとし、言葉の組み換えや言いかえで新たな意味を創発する試みだ。

 

※芭蕉三句:行く春や鳥啼き魚の目は涙 …芭蕉旅立ちの時
      夏草や兵どもが夢の跡   …岩手県平泉にて
      閑さや岩にしみ入る蝉の声 …山形県立石寺にて

 

ワークショップ最後の題目「三句出会いのアクロバティック」では、芭蕉の三句をコラージュし、自選作を発表した。

 

※参加者の自選句:
   去る秋や儚き恋の目は涙 原田遥夏さん
   閑かなりつわものどもの夢の声 田中睦さん
   夢の跡行く春しみるチャイムの音 相内洋輔さん
   行く夏や肌にしみいる日焼け跡 有我渉さん
   行く夏やつわものどものサザン聴く 尾崎伸行さん
   行く春や夏草を踏み目は泪 遠藤健史さん
   去る夏や木にこぼれる蝉の涙 浦野裕さん
   行く春やつわものどもとガレキ跡 深谷幸子さん

 

またたくまに、儚くもあり、甘酸っぱくもあるプロフィールをはらんだ俳句がうまれた。表現はオリジナリティではなく、コラージュする技法で生成する。俳聖・松尾芭蕉のあやかり編集の成果であった。

 

 

▲未知奥連・平形智子さんによる書写。手ざわりの質感のしつらえだ。

  • 井ノ上シーザー

    編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。