【近江ARS】瀬戸を越えよー12/21(水)第3回「還生の会」

2022/12/19(月)23:58
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 古くは「淡海(あわうみ)」と呼ばれたこの地は、律令制の導入に伴い「近江」と記されるようになった。

 

 2021年12月3日、いつしか世間の関心からは遠のいたこの地に「近江から日本が変わる」と掲げる一座が姿を現した。松岡正剛により「近江ARS」と名付けられた面々は、近江から日本の「もうひとつのスタイル(Another Real Style)」=「新たな日本の様式」を生み出すことを目指す。

 一座の発端となった、近江にルーツを持つ松岡正剛と三井寺長吏の福家俊彦の出会いを為したのは、この地で中山倉庫を営んできた中山雅文だ。グローバル資本主義に藻掻き、抗い、AIDA受講に至る。松岡を慕い、その方法を自らに刻むべく守破離を終えた。タッグを組むのは、百間の和泉佳奈子だ。伝説となった松丸本舗、記憶に新しい角川武蔵野ミュージアム「エディットタウン」、松岡の片腕となって数々のプロジェクトを生み出してきた。両者の「近江に息づく物語を編みなおし、現代の日本を問いなおしたい」という宿望が一座を牽引し、形を帯び始めた。

 

 お披露目からちょうど1年経った近江ARSの核となる試みのひとつが「還生の会」である。松岡、福家が、仏教学の第一人者である末木文美士氏を迎える。松岡も目から鱗が落ちたという『日本仏教史』は、仏教思想の歴史と共に、日本思想の来し方をも立ちあげる。多くの著作には「日本を眺めるための仏教」が通底する。仏教に縁の深い近江にて、三者で日本仏教を捉えなおし、日本の奥へと分け入ろうというのだ。

 来たる2022年12月21日、第3回目となる「還生の会」が開催される。初回の「日本仏教の見方」、第2回目の「国家と宗教―最澄の目指したもの」に続くテーマは「草木は成仏するか?ー日本仏教の自然観・人間観」である。「草木のような植物でも仏になる」という草木成仏論は、どこからきたのか。われわれの自然観に迫る一日となろう。

 

 松岡による「会を通じて『伏せられたものが開いていくこと』を全身で感じてほしい」という言葉が近江ARSには響いている。「ありったけの五感をはたらかせ、思考を巡らせていただきたい」と一座による場づくりには余念がない。幕開けの瞬間まで整え続ける。

 三井寺を囲む山の姿、会場に配するオブジェ、饗する茶菓。今この瞬間も用意の只中にある。第2回目は、当日の午前中に決まったという福家による鐃鉢(にょはち)という打楽器の演奏で開幕した。第3回目は、これに匹敵する、いや超越する演奏を企てている。大いに期待されたい。


 日本では、「もてなし」「しつらい」「ふるまい」の三つが関わりあって「場」を動かしてきた。冬至冬中冬始め、寒さの極みを迎えるなか、瀬戸を越えんとする「しつらい」はどのような景色をたちあげるだろうか。見逃すなかれ、体感すべし。

 

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近江ARS 第3回「還生の会」の詳細

◎日時
令和4年12月21日(水)14時~20時30分頃(受付開始13時30分)
 
◎テーマ
「草木は成仏するか? 日本仏教の自然観・人間観」

 

◎場所
三井寺事務所
滋賀県大津市園城寺町246 〒520-0036
 
◎出演
末木文美士 未来哲学研究所所長
松岡正剛  編集工学者  
福家俊彦  三井寺長吏
 
◎定員
現地参加    約70名(満員御礼にて締め切りました。)
オンライン参加 約120名

※オンラインは12月20日(火)夕方まで申し込み可能となっています。

 

◎お申込みはこちら
https://arscombinatoria.jp/omi/news/19
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  • 阿曽祐子

    編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。 「阿曽祐子の編集力チェック」受付中 https://qe.isis.ne.jp/index/aso

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025