バジラ高橋一行、雪の鞍馬詣で

2020/02/29(土)10:16
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天狗像

 

 真っ赤な天狗の鼻に真っ白な雪が積もっている。
 2月9日午前11時半、バジラ高橋こと高橋秀元とともに鞍馬寺に詣でんと、イシス人の一行が洛北、叡電鞍馬駅に降りたった。
 京都に住む写真家のエバレット・ブラウン、多読ジムの大音美弥子冊匠。野嶋真帆師範、山田細香師範代、吉野陽子師範、松井路代師範代、九天から駆けつけた光澤大志ほか、子ども3人をふくめ多士済々の18人である。
 仁王門をくぐり、ケーブルカーで多宝塔まで一気に上がる。

 谷向こうの山々はどこまでも雪にけむっている。里とは隔絶された景色に、写真家のエバレット・ブラウンが法螺貝を取り出して吹き始めた。

バジラ高橋こと高橋秀元

法螺貝を吹きながら参道を行く写真家のエバレット・ブラウン

 
 本殿に入り、奥に祀られている黒々とした毘沙門天像に手を合わせる。バジラ師は、本殿で新しい護符と巡拝用のろうそくを求めた。
 奥の院魔王殿をめざし、鞍馬山へ入っていく。義経公息つぎの水、背くらべ石。灯りを奉納しながらゆっくり歩みを進める。
 木の根道に至る。地盤が固く木々の根が地表を這っている。牛若丸が跳躍の稽古をしたという伝説が残っている場所だ。「ここがたぶん、一番てっぺんだよ!」子どもたちの声が響く。枝をひっぱると雪がふわっと舞い散る。

木の根道


 僧正ガ谷不動堂脇の沢に、おととしの台風でねじ倒されたままの大木が橋のようにかかっているのを見つけた。
 誰もが言葉少なになり、進み続ける。


 ついに奥の院魔王殿に至った。何時間も経ったように感じたが、時計を見るとまだ午後二時を過ぎたところだ。
 御堂の屋根の下に入り、一息ついた。社殿の向こうにはごろごろとした岩がある。磐座である。鞍馬山は堂塔伽藍が整えられるずっと前から、尊天=宇宙エネルギーにつながる場所として信仰を集めてきた。
 「心経を唱えてください」というバジラ師の言葉に光澤大志が応じる。そのあとバジラ師自身が真言を唱えた。

 

鞍馬寺 奥の院魔王殿


 「すなわち『我らは光なり』ということだね」。バジラ師が問わず語りに語る。「すなわち、我らは情報なり。我らは言葉なり。すなわち、生命である。生命だっていうことは、エントロピーの逆数だっていうことだ」。
 「なんだか必死な感じがしますね」と野嶋師範が応じる。「秩序だということだね」。

 皆で再び、磐座を拝し、貴船へ通じる道を下り始める。雪がやみ、ぬかるみ始めた。足元に気持ちを集中して、無言で降りる。
 遠くに西門と貴船川にかかる赤い橋が見えた。川沿いに料亭が並んでいる。――懐かしい俗なる世間。あたたかいものを食べたい、温泉に入りたいという欲がよみがえってきた。
 バジラ師に尋ねると、鞍馬山参詣はもう40年ほどになるという。
「いつもちがうこと、新しいことをする性分だからね。一つぐらいは毎年同じことをしようと考えてね。雪の鞍馬はそのうち15回ぐらいかな。こんなに雪なのは久々だったなあ」。
 一期一会の集いはここで中締めとった。
 甘味組、温泉組に分かれて手を振りあう。また降り始めた雪の中、次なる目的地に向けて歩き始めた。

 

(写真協力 光澤大志、泉谷よしあき)


  • 松井 路代

    編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。

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