物理学者でノーベル賞の受賞者。京都市名誉市民で、全ての核兵器と戦争の廃絶を訴える「パグウォッシュ会議」の第1回からの参加者。『目に見えないもの』など物理思想に関する書籍を多数執筆。その人こそ「湯川秀樹」であり、今春の輪読座で取り組む初の物理学者である。
20世紀は科学や物理学にますます哲学が求められるようになった。その象徴が1930年にアルバート・アインシュタインが発表した原子核の崩壊エネルギーの公式が、原爆開発に用いられたことだろう。アインシュタインは、人類の大きな犠牲を払った原爆や国際連合の戦争抑止力の低さを痛感し、後に哲学者のバートランド・ラッセルなどの科学者・文化人たちとより強力な世界連邦の形成をすすめる「世界連邦運動」をはじめた。そこに加わった日本人が湯川秀樹だったのである。
21世紀に入り20年を過ぎたものの、ロシアのウクライナ侵攻でも「核」の問題は今なおその影をちらついている。アインシュタインの公式発表から100年近く経とうとする今も、解決に至っていないばかりか、ますます問題は深刻化している。輪読師のバジラ高橋によると、今の世界をおおっている「ヘーゲル主義」の二項対立には創造はなく、21世紀の課題解決は望めないと読む。その背景を次のように述べている。
コロナ禍に追い打ちをかけるウクライナ戦争に、日本経済は経常赤字に陥り、円は国際通貨の役割を終えるかどうかの瀬戸際にある。この状況下にあって、何が「正」で何が「反」かが明確でない。欧型の「善」と「悪」を判別し、「善」を推奨する議論もむなしくなっている。
ーバジラ高橋
ヘーゲル主義やヘーゲル論理学を脱するこれからの哲学を問いつづけた人こそ湯川秀樹であったとバジラは見る。バジラによると、その湯川の物理哲学の中には「長岡半太郎やアインシュタインやハイゼンベルグとともに、日本の空海や世阿弥や三浦梅園。東洋の荘子や墨子や李白が息づいている」という。ヘーゲル型の二項対立ではもはや編集しきれない課題に、西洋、東洋そして日本の哲学をもって向かいつづけてきたのが湯川秀樹であった。
輪読座「湯川秀樹を読む」は4月から9月の毎月最終日曜に開催。バジラお手製の図象解説を行った上で、湯川秀樹の著作を受講生で輪読する。予習不要・予備知識も一切不要の開かれた輪読座は今期もリモートで開催。オンライン形式にシフトして以来、毎回全国各地から受講者が集まっている。
なお、受講申込者にはバジラ高橋による湯川秀樹の思想とクロニクルをモーラした解説資料が提供される。21世紀を編集するための日本哲学を学ぶなら今だ。
日本哲学シリーズ 輪読座「湯川秀樹を読む」詳細・申込はこちら
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
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