2022年に湯川秀樹を学ぶ理由【輪読座 第1輪】

2022/04/24(日)17:29
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なぜ戦争は止められないのだろうか。毎日のように報道されるロシアによるウクライナ侵攻のニュースに胸を痛めない日はない。破壊と悲劇ばかりを生み出すこの戦争はなぜ起こるのか。20世紀は「戦争の世紀」と呼ばれたが、2022年の現在も未だに戦争を再編集できていないのは明らかである。

 

2022年春の輪読座では、初めて物理学者である湯川秀樹を取り上げる。輪読師のバジラ高橋は「戦争の根本には世界を覆うヘーゲル主義がある」という。自由主義(liberalism)のヘーゲル右派と共産主義(Communism)のヘーゲル左派の対立が招いているのだと。正反合の弁証法を掲げるも、現実には二つの思想対立を鎮火してきたのは常に多数決と暴力と戦争でしかなかった。

 

このヘーゲル主義を抜け出し、21世紀に先駆けた思索体系を編み上げた人こそ、湯川秀樹であったとバジラは見る。かつてバジラは、京都大学に在籍していた湯川に電撃でアポを試み、湯川とのインタビューに奇跡的に成功をした数少ないひとりである。そこで聞いた肉声や著作を通じ、湯川の思想には長岡半太郎やアインシュタインやハイゼンベルグだけでなく、日本の空海や世阿弥や三浦梅園、東洋の荘子や墨子や李白が息づいていると確信したという。

4月24日の第1輪では、湯川の思想に迫る準備として、ヘーゲル思想の起源となったギリシア哲学まで立ち返り、アインシュタインやボーアに至るヨーロッパの科学的思考を一気に外観した。以下、バジラ編集のオリジナル図象の目次立てと、そこに登場する哲学者・科学者を紹介する。

 

1.BC5世紀〜:ヘーゲル主義・現代哲学は、プラトン・アリストテレスから遡って再構築

 パルメニデス、ヘラクレイトス、レウキッポス、アナクサゴラス、デモクリトス、プラトン、アリストテレス

2.17世紀〜:アリストテレスの真空嫌悪・重力説・元素説を打ち破り、真空・原子・万有引力発見

 ゲーリケ、ボイル、ロバート・フック、トリチェリ、ニュートン、キャヴェンディッシュ、カール・シェーレ、ラボアジェ、ハーシェル、ワット、ラプラス、ドルトン

3.19世紀〜:電磁気学、熱力学、素粒子の発見と原子モデルと量子

 ガウス、カルノー、マクスウェル、クラウジウス、キルヒホフ、メンデレーエフ、クルックス、J.J.トムソン、プランク、長岡半太郎

4.20世紀空:アインシュタインの奇跡と原子モデルの量子化

 アインシュタイン、ラザフォード、ボーア、ド・ブロイ、シュレーディンガー

 

輪読座は「バジラによる図象解説→著作の輪読→輪読衆によるシェーマ化」の三間連結で進行する。濃密な講座であることは間違いないが安心してほしい。そもそも輪読座は予習不要、予備知識不要の場。既存の見方にとらわれない、自由な読みを重視している。

 

21世紀の日本人が、他の何を捨てたとしても持っておくべきは、湯川秀樹の思索体系である。

ーバジラ高橋

 

21世紀を編集するための湯川思想を学びたければ輪読座へ。バジラは21世紀の方法を求める受講生を歓迎している。なお図象や輪読する著作物、当日のZoom映像は受講生に提供されるので、いつでもキャッチアップが可能である。


バジラオリジナル図象(一部)。イシスでお馴染みの編集思考素やクロニクル編集術がふんだんに用いられている。バジラ高橋こと高橋秀元は、校長松岡をして「高橋君はそのへんの学者の十人力・百人力の推理力と読解力の持ち主」と言わしめた編集力の持ち主でもある。

 

日本哲学シリーズ 輪読座「湯川秀樹を読む」詳細・申込はこちら

 

  • 上杉公志

    編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。

コメント

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川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。