そうかー、おやつにもダブルページが潜むことがあるのだな、と感服しつつ、心は陽春の野山を駆け巡る。軽やかに舞い降りては、ふんわり翅を開くダブルページたち。秀逸は、ブックデザイナー顔負けのイシガケチョウ。
人間は「新奇性」に惹かれる
渋谷のスクランブル交差点の信号が青に変わる。反対側からは何十人もの群衆がどっと押し寄せてくる。その人の塊の中から、なぜだかあるひとりに視線がいってしまう。
その斬新な服装ゆえだろうか。おぼつかない歩き方をしているからだろうか。その人にしか見られない新しさに自然と注意のカーソルが向かってしまう。誰しも少なからず似たような体験をした覚えがあるのではないだろうか。
人間は新奇性に心動かされる生き物である。その性質はどうやら小さな頃からあるらしく、慣れ親しんだ顔と見知らぬ顔を並べると、赤ん坊は見知らぬ顔ばかりを見るという。このような性質は他の動物には見られない。新奇性に喜びを覚えるのは人間特有なのだろう。
2022年5月29日の輪読座第2輪は、座衆による図象発表から始まった。この図象とは、前回の学びを一枚に図式化(シェーマ化)したもの。輪読座では、単なる要約だけでなく、座衆それぞれの関心や新しい見立てが歓迎される。
第1輪では、古代史から湯川秀樹に至るまでの科学史を概観した上で、「短い自叙伝」「科学的思考について」「アインシュタイン博士を憶う」「詩と科学」などの湯川著作を輪読した。
座衆はどこに新奇性を感じたのだろうか。3名の座衆の図象から、「湯川秀樹の新奇性」への喜びを想像していただきたい。
「目に見えないもの」のクロニクルを原子模型に見立てる
「『目に見えないもの』に注意のカーソルが向かった」という田中良英座衆は、その変遷を元素模型のように図象化した。時代ごとの「目に見えないもの」を赤のハイライトにし、波状の矢印で次の時代へとパラダイム・シフトする上でのキーパーソンを表現している。これからの「超現代」に向けて(右下部分)は、湯川秀樹とその思想が要になるのではと仮説をしている。
「詩と科学」に惹かれて
「『詩と科学は遠いようで近い』という一節(図象右上部分)が素敵だと思った」という山口イズミ座衆。さらに少年湯川が抱いていた厭世観や西洋思想への違和感に注目し、東西の思想を対比的しつつを図式化した。図象を見た吉村林頭は「今後の輪読座の中でさらに書き込みをして充実させていってほしい」と期待を寄せた。
「むつかしい『から』やる」ーー湯川秀樹流ネガティブ・ケイパビリティ
山内貴暉座衆は48[破]学衆であり、『情報の歴史21』を読むシリーズの常連の一人。まずは注意のカーソルが向いた湯川著作を複数引用(一番文字が小さい部分)。その上で「開放的世界観」→「学習と研究」・・・→「生き甲斐」とキーワードでリンキングする。こうしたプロセスを経て、「非常にむつかしい『から』やっている」という湯川のネガティブ・ケイパビリティに共感するとともに、編集工学との共通性も感じられたという。
今日の第2輪のテーマは「ベータ崩壊と中間子」。原子仮説と量子論のクロニクルを経て、湯川秀樹の中間子論の構築についてバジラが図象解説をした上で、「理論物理学への道」「放射線と物質」「中間子について」「ベータ崩壊の古代史」などを輪読する。今回はどのような「湯川の新奇性」が座衆をワクワクさせるのだろうか。
日本哲学シリーズ 輪読座「湯川秀樹を読む」は現在も受講生募集中である(開催終了分も動画でキャッチアップいただけます)。
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上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
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コメント
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これまでにも「神童」もの(?)を数多く描いてきたさそうあきら先生だが、ご本人は極めて方法に自覚的な職人タイプ。長年、マンガ学科の教員として教鞭をとり、『マンガ脚本概論』などの技法書にも定評がある。
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目玉入道、参上。
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