鋸鍬形、犀兜、鰹象虫、乳母玉虫、碁石蜆、姫蛇の目、漣雀、星枯葉、舞妓虎蛾、雛鯱、韋駄天茶立、鶏冠軍配、鶉亀虫。見立ては、得体の知れないものたちを、手近に引き寄せたり、風雅に遊ばせることの糸口にもなる。
イシス編集学校には「六十四編集技法」という一覧がある。ここには認識や思考、記憶や表現のしかたなど、私たちが毎日アタマの中で行っている編集方法が網羅されている。それを一つずつ取り上げて、日々の暮らしに落とし込んで紹介したい。

「8月の始めに売り切れやって。間に合わんかった」。報告する知人は口惜しそうだ。夏の盛りに売り切れたのはチケットではない。氷菓や気の早い秋の味覚でもない。高知のお正月の定番「皿鉢料理」である。
五穀豊穣に感謝する神事から生まれた同様の盛り鉢料理は、明治中期までは全国各地に見られた。多くの地域で自然消滅したが、高知には残り、冠婚葬祭に欠かせない存在である。一昔前は家庭や集落のおかみさん達が手作りしていたが、今は仕出し屋が運んでくる。生活スタイルの変化とともに作り手はかわっても、地元の人は親しみを込めて「さわち」と呼ぶ。
海の幸、山の幸、川の幸など故郷の自然が恵んでくれる全てが盛られた皿鉢料理は、64技法の【01収集(collect):種類を限定して広く集める】の極みである。
盛り込みと呼ばれる最もポピュラーなものは、酢の物や巻きずし、からあげ、てんぷらに魚の煮つけ等々に羊羹までが直径30〜50cmほどの大皿にのっている。フルコースなら前菜からデザートまでが一つところに豪快に詰め込まれている。
収集されているのは食材や料理だけではない。
懐石やコース料理とは異なり、皿鉢料理は一度作って宴卓に置けば給仕の必要がない。多少の人数の変動にも柔軟に対応でき、一皿で軽く4〜5人の胃袋を満たすことができる。難しい約束事もない。年寄りから子どもまで、各自で席を確保し、好きなものを各々勝手に取り分ける。これで、忙しい女性たちも共に宴席につくことができる。土地の人の知恵と工夫が皿の上に収集されているのだ。
人生の節目節目に座に連なったもの同士、よく食べ、よく飲み、よく語る。悲しみも喜びも共に一つの皿を分け合っていただく。さわちには土佐の編集が今日も脈うち、変化を続けている。

(design 穂積晴明)
しみずみなこ
編集的先達:宮尾登美子。さわやかな土佐っぽ、男前なロマンチストの花伝師範。ピラティスでインナーマッスルを鍛えたり、一昼夜歩き続ける大会で40キロを踏破したりする身体派でもある。感門司会もつとめた。
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コメント
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2026-02-03
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