あらわれる世相・あらわす決意 46守、世界の新発見へ

2021/01/07(木)10:30
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「編集学校をみている方が世界がわかってくる」。松岡校長の言葉を実感するできごとが46[守]別院でも起こった。
2020年から2021年、年をまたいで別院では「年越し札納め」が行われた。初詣もままならない今年ならではの企画だ。
お題は、( )2020年・( )2021年、送る( )・迎える( )のふたつ。カッコの中を埋めて対句をつくるというもの。学衆、師範代、師範に学番輪匠から80枚の札が納められた。

そこには、COVID-19に煽られながらも蠢いた2020年と、矛盾を抱えたまま大きく踏み出す2021年が表れていた。  
2020年・2021年の札から象徴的なものを紹介する。
    
局所的な2020年・大局的な2021年
拓いた2020年・育む2021年
ひらく2020年・むすぶ2021年
耕起の2020年・播種の2021年
連綿キャンセル2020年・間断チャレンジ2021年
どうしよう 2020・こうしよう 2021
しどろ足の2020年・刻み足の2021年
逃げて追いかけた2020年・受けて立つ2021年
潜って2020年・抜けて2021年
忍苦の2020年・謳楽の2021年
眩ます2020年・彩なす2021年
新月の2020年・満月へ2021年
きづく2020年・すすむ2021年
沸々2020年・爛々2021年
番える2020年・放つ2021年
開放の2020年・解放の2021年
放流の2020年・貯水の2021年
座の2020年・機の2021年
澱みの2020年・流麗の2021年
グツグツの2020年・シュワシュワの2021年


46[守]別院は、学衆自らが立ち上げた喫茶店や本棚でにぎわっている。「学衆さん主導でこんなに別院が動いたことが、今まであっただろうか」。編集学校ロールを歴任した渡辺恒久師範がつぶやくほどだ。

1月6日には[守]最大の祭りである「番選ボードレール:即答!ミメロギア」が出題された。回答と指南を繰り返した果てに、どんな世界を見せてくれるのだろうか。ミメロギア番ボーの締め切りは1月11日(月)22時、爛々の46[守]に注目を。

 

  • 石井梨香

    編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025