飲む葡萄が色づきはじめた。神楽鈴のようにシャンシャンと音を立てるように賑やかなメルロー種の一群。収穫後は樽やタンクの中でプツプツと響く静かな発酵の合唱。やがてグラスにトクトクと注がれる日を待つ。音に誘われ、想像は無限、余韻を味わう。

「急募!つんどく本を求む」。この案内が出てから10日経たぬ間に、48[守]別院には50冊のつんどく本が持ち込まれた。辞書によれば、【積読】(つんどく)とは書物を買ったまま読まないでただ積んでおくことであるが、本に添えられたエピソードから、50冊と持ち主の間のただならぬ関係がうかがえる。
「タイトルが気になり即購入」「本から漂う品の良さに惹かれて、思わず」「お茶の水の古本屋で出会い、興奮して購入」「一か月ほど本屋で見守り続け、とうとう」。出会いの時期や状況、書店の場所、第一印象までが鮮明に記されている。一目惚れである。
しかし恋は簡単には成就しない。「圧倒的な存在を放しつつも、少し近寄り難い表情をしており机の上から動こうとしません」「読むだけならすぐ読めそうですが、じっくり味わいたい感じがして」。成就させたくない思いもあるようだ。
そうではあるが、「約10年わが家の本棚に鎮座しています」「処分するけど、舞い戻ってくる」。つんどく本は、ただ積まれていたわけではない。出会った時から交際が始まっていたのだ。表紙に目をとめた時から、本との恋愛は気づかぬうちに深まっているのである。
■48[守]のつんどく本リスト/「みちの本棚」(持ち込み順)
『ブッデンブローク家の人々』トーマス・マン(番匠:W)
『カフカ式練習帳』保坂和志(番匠:S)
『利己的な遺伝子』リチャード・ドーキンス(源泉宅急便教室:H)
『芸と道』松岡正剛(一調二機三声教室:U)
『土と内臓』ディビッド・モンゴメリー/アン・ビクレー(チーム・神仏集合!:M)
『場から未来を描き出す』ケルビー・バード(イシス宣伝本部:M)
『京大の筋肉』森谷敏夫(イシス宣伝本部:M)
『ヘルメスの音楽』浅田彰(イシス宣伝本部:M)
『想像ラジオ』いとうせいこう(じきじき編調教室:M)
『「いき」の構造』九鬼周造(じきじき編調教室:M)
『世界神話学入門』後藤明(M型スピリッツ教室:H)
『アンチ・オイディプス‐資本主義と分裂症』ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ(臨間オチョコ教室:I)
『島とクジラと女をめぐる断片』アントニオ・タブッキ(チーム・声字ベイベー!:S)
『ウォールデン 森の生活』ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(平蔵もっぱら教室:I)
『時のかたち 事物の歴史をめぐって』ジョージ・クブラー(オリーブなじむ教室:T)
『視覚とヴァーチャルな世界 ―コロンブスからポストヒューマンへ』北澤裕(オリーブなじむ教室:T)
『らせん状想像力―平成デモクラシー文学論―』福島亮太(オリーブなじむ教室:T)
『火山』遠藤周作(点閃クレー教室:K)
『虚数の情緒』吉田武(点閃クレー教室:O)
『哲学入門』バートランド・ラッセル(キャンピングサティー教室:Y)
『俳優修業 第一部』スタニスラフスキー、山田肇訳(板付Bダッシュ教室:O)
『新編妖怪叢書(全8巻)』井上円了(チーム<い・キ・き>:K)
『エゴ・トンネル 心の科学と「わたし」という謎』トーマス・メッツィンガー/原塑、鹿野祐介(訳)(いつもトンネリアン教室:H)
『リボルバー』原田マハ(しんがりスサビ教室:S)
『歌舞伎のキーワード』服部幸雄(平蔵もっぱら教室:S)
『神曲 (地獄篇・煉獄篇・天国篇)』ダンテ(チーム遊獏みん:H)
『コモンズとしての日本近代文学』ドミニク・チェン(チームたそかれ灯路:A)
『読んでいない本について堂々と語る方法』ピエール・バイヤール(オリーブなじむ教室:Y)
『日本史10人の女たち』佐々木和歌子(キャンピング・サティ教室:I)
『「当たり前」をひっくり返す バザーリア・ニィリエ・フレイレが奏でた「革命」』竹端寛(平事有事教室:I)
『わたしの生涯』ヘレン・ケラー(オリーブなじむ教室:T)
『饗宴』プラトン(電束青猫教室:W)
『たとえる技術』せきしろ(平事有事教室:N)
『桂離宮』和辻哲郎(しんがりスサビ教室:N)
『ワープする宇宙』リサ・ランドール(一調二機三声教室:F)
『ひみつの王国―評伝 石井桃子―』尾崎真理子(モーラもらもら教室:K)
『離れがたき二人』シモーヌ・ド・ボーヴォワール(はいから官界教室:T)
『銀の匙』中勘助著、安野光雅(絵)(臨間オチョコ教室:N)
『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』金水敏(源泉宅急便教室:M)
『懺悔道としての哲学』田辺元、藤田正勝編(学匠:S)
『空の空なればこそ』堀田善衞(しんがりスサビ教室:U)
『一杯のおいしい紅茶』ジョージ・オーウェル(断然ユイマール教室:Y)
『解剖学教室へようこそ』養老孟司(じきじき編調教室:S)
『樹木たちの知られざる生活』ペーター・ヴォールレーベン(イシス宣伝本部教室:T)
『死とは何か』シェリー・ケーガン(断然ユイマール教室:H)
『賢治の手帳』司修(チーム・そうてん座:M)
『神と仏の出逢う国』鎌田東二(チームふら・こあ:K)
『食のイタリア文化史』アルベルト・カパッティ、マッシモ・モンタナーリ(いつもトンネリアン教室:S)
『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ(点閃クレー教室:G)
『ブルーノ・ムナーリ の本たち』ジョルジョ・マッフェイ(オリーブなじむ教室:T)
石井梨香
編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。
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コメント
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2025-08-16
飲む葡萄が色づきはじめた。神楽鈴のようにシャンシャンと音を立てるように賑やかなメルロー種の一群。収穫後は樽やタンクの中でプツプツと響く静かな発酵の合唱。やがてグラスにトクトクと注がれる日を待つ。音に誘われ、想像は無限、余韻を味わう。
2025-08-14
戦争を語るのはたしかにムズイ。LEGEND50の作家では、水木しげる、松本零士、かわぐちかいじ、安彦良和などが戦争をガッツリ語った作品を描いていた。
しかしマンガならではのやり方で、意外な角度から戦争を語った作品がある。
いしいひさいち『鏡の国の戦争』
戦争マンガの最極北にして最高峰。しかもそれがギャグマンガなのである。いしいひさいち恐るべし。
2025-08-12
超大型巨人に変態したり、背中に千夜をしょってみたり、菩薩になってアルカイックスマイルを決めてみたり。
たくさんのあなたが一千万の涼風になって吹きわたる。お釈迦さまやプラトンや、世阿弥たちと肩組みながら。