何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

1800夜達成を記念して、贈呈された「千夜一撃帖」。イシス編集学校の師範、師範代からAIDAの座衆、編集工学研究所、松岡正剛事務所のスタッフたちまでが、それぞれ1800夜から雷鳴に撃たれた一夜とワンフレーズを選び、いかにわたしは直撃されたかを吐露したものである。速報記事「祝1800夜! 松岡正剛を囲む千夜一撃帖の夕宴」で祝宴の一部を紹介したが、あらためて130名がどんな千夜を選んだのかをご紹介しよう。
もっとも多く選ばれた千夜はなんだったでしょうか? と聞くと、ほぼ全員が『良寛』と答えた。1000夜という節目の一夜でもある。イシス編集学校の10周年感門之盟で能楽師の安田登が朗誦しながら舞った一説、「切実を切り出さずして・・」を5人中4人が選んだ。
つづいて、3人が選んだのがヴィトゲンシュタインとパース。千夜千冊エディション『編集力』にも取り上げられている2夜。編集工学の先達としても当然のセレクトだ。ヴィトゲンシュタインは見事に「カタルトシメス」の一説が取り上げられている。パースの一節は小川、三津田、嶋本と読んでみると繋がるように読めなくもない。
ほぼ同じワンフレーズを選んだのが、森茉莉と宮沢賢治の2夜。森茉莉を選んだのは14離で典離を受賞した山口、寺田両師範代。二人とも汚れたコップがヴェネチアン・グラスになる想像力の持ち主のようだ。『銀河鉄道の夜』からは、「編集化学の原郷」という印象的なフレーズを牛山、森本両師範が選んだ。
子どもプランニングフィールドの面々は、「子ども編集学校」の構想には欠かせない千夜をずばりチョイス。「幼なごころ」と「想像力」。これは人類に残された最後の資源なのだ。突起とリズムとふりを大事にしたい。
「女のはないき、男のためいき」というのは斎藤茂太だが、まずは「男のためいき」3セットをご紹介する。
ルイス・トマスの「役に立ちたい衝動」「矛盾・葛藤・弱点」を選んだ敷田、米川は、なぜか揃って被り物でドレスアップ。橋本参丞、オネスティー上杉のイケメンコンビはパサージュへのこだわりで胸を張った。吉田一穂のアナキズムを選んだ金、小桝には男の悲哀とダンディズムを感じる。
続いて、「女のはないき」3セットのご紹介。フラジャイルな雨情を選んだ大塚、後藤には隠しきれない松岡正剛への恋情が覗く。イシス の鉄板ディラードに撃たれたという木村月匠と福澤冊師の不思議なカメラ目線。「書く」ぞという意志と鼻息の現れだろうか。エレガントな丸&若林はパンセをチョイス。勇ましい一節を取り出した二人だが、それでも上品な風情を感じてしまう。
男と女のペア千夜からはどんな共通点が見出せるだろうか。物語派のラクダ白川と花目付・林はオースター。キーワードは「なじみ」だ。イシス 若手の佐藤英太とウメコは西行と恋心を寄せられた女院のようでもある。二人からは覚悟と切実が滲む。妹尾、荒木両師範代は『共通感覚論』の全く違う場所を選んでいるが、編集への熱情が共通感覚している。ベテラン景山、納富からは何やらほんわかした雰囲気を感じる。さもありなん。千夜再スタートの記念すべき一夜、よほど嬉しかったようである。
ラストを飾るペアはイシス 編集学校を言い換えたような千夜千冊である。「江戸の読書会」が現在化されているのが編集稽古だろう。そしてイシス とはまさに「世界制作の方法」の実践なのである。ここでも古澤師範代はとことんザリガニにこだわって見せてくれた。
さて、千夜一撃ランキングいかがだっただろうか。次回は、意外な人物が意外な一夜を選んでいる一撃帖を、千夜クロニクル的に紹介したい。
吉村堅樹
僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。
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コメント
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2025-10-02
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2025-09-30
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2025-09-24
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