自己は事件からしか生まれない 35[花]放伝式【77感門】

2021/09/05(日)18:51
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花伝所は [破]を修了したものだけが許される、師範代養成コースである。第35期花伝所の放伝式。恒例の花伝扇授与の前には、田中晶子所長、深谷もと佳花目付、三津田知子花目付による三頭鼎談がおこなわれた。

 

今季は道場ごとの花伝師範に二人の錬成師範加わって、初めて三人がかりで入伝生を迎えた。

まるで文楽の三人使いのようだった。
ーーー田中晶子


指南する側も「差し掛かり」を引き受けていかなければ、魂がこもらない。
そのための指導方法、仕組み自体をを開発していくことが私たちの使命だと思う。
ーーー深谷もと佳


価値が一様になっていくなかで、評価の力、批評の力が求められてる。
受容とは抱きしめることだけではなく、問いを投げかけること、別様可能性を見出すことではないか。
ーーー三津田知子

 

 

花伝扇授与では、初の花伝錬成師範をまっとうした四名には松岡正剛校長から「花伝」の二文字を書した扇が贈られる。四つの花伝扇には四人四様それぞれの「らしさ」が込められている。校長からマイクを向けられた錬成師範たちは稽古を振り返り、抱負を語る。最初の授与者の梅澤奈央は「師範になれば社会も指南できると思った。それをエディストで実践しています」。梅澤の歯切れの良い発言に校長は「やっぱりウメコだ」とうなずき唸った。

 

梅澤奈央 花伝錬成師範

 

蒔田俊介 花伝錬成師範

 

米田奈穂 花伝錬成師範

 

神尾美由紀 花伝錬成師範

 

 

 

続けて、花伝錬成師範を複数回つとめた人に「師範選書」が授与された。校長が花伝指導陣のために厳選した1冊である。授与を受けたメンバーはこの10名。

 

林 朝恵 花伝師範

白川雅敏 花伝師範

小倉圭吾 花伝師範

岩野範昭 花伝師範

吉井優子 錬成師範

中村麻人 錬成師範

山田細香 錬成師範

加藤めぐみ 錬成師範 

三津田知子 花目付

深谷もと佳 花目付

 

 

『事件! :哲学とは何か』

スラヴォイ・ジジェク (著), 鈴木 晶 (翻訳), 河出ブックス

 

校長は語る。「ジジェクは世界の哲学者のベスト10に入ると思う。何よりも”想像力こそが感染している”と明言してきた。この本にはこんなことを書かれている。この3つは絶対に忘れないでほしい。一、真実は痛い。二、自己は事件からしか生まれない。三、真理は誤謬からしか生まれない

 

文:金宗代

  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。