新ハイパーミュージアムの夜明け前? 松岡正剛の書道美術館視察10shot

2022/10/14(金)08:00
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 新たなハイパーミュージアムができるのだろうか?

 とあるプロジェクトの下準備のため、松岡正剛が成田山書道美術館(千葉県成田市)に視察に行くという。新しいプランニングがブクブクと沸き立つ手前のようだ。

 プランニングと言えば、ISIS編集学校[破]コースで稽古するプランニング編集術のこと。《よもがせわほり》と呼ばれる編集フォーマットを使いながら、連想と要約を何度も何度も繰り返し、プランに形を与えていく。(この呪文のような編集術《よもがせわほり》については[破]コースでたっぷりと稽古をしていただきたい)

 今回の視察はプランニング編集術の一番最初《よ》(よ:与件の整理)のさらに手前。仮に《よ前夜》と名付けてみたい。松岡の《よ前夜》のほんの一端を10shotでお届けする。

 

 成田駅から徒歩25分。参拝客で賑わう新勝寺を抜け、成田山公園を散策しているとその一角にひっそりと姿を現す成田山書道美術館。

 

 10月某日。この日は「近代千葉の書/千葉県書道協会役員展」が開催中であった。山岡鉄舟、犬養毅、高浜虚子をはじめ千葉にゆかりある作家の作品が鑑賞できる。(会期2022年10月16日まで)

 

 美術館に入ると全長13メートルの「紀泰山銘」(原拓)が来館者を悠然と迎えてくれる。この石刻の実物は中国山東省の泰山にある。ゆっくりと作品に近づき眺める松岡。

 

 「紀泰山銘」を囲むように展示されているのが千葉県書道協会役員展。

 ちなみに雑誌『墨 2022年9・10月号278号』(芸術新聞社)で特集されている成田山書道美術館の撮影担当は、奇遇にも「册影帖」の写真家 川本聖哉さんであった。松岡もかつて『墨』に10年以上も連載をしていたという。

 

 これだ、と思った作品にはじっくりと向き合う。既存のモデルをしっかりと掴まえることがハイパープランに向かう基本の基本なのだろう。慈しむように作品を見つめる視線は校長として編集学校の師範に贈る玄々書を書く時も同じである。

 

 「犬養はいいね。相当うまいね」近江ARSプロデューサーであり、第37期[花伝所]の放伝生である和泉佳奈子(株式会社百間 代表)と犬養毅の書「学然後知不足」に見入る。写真右は動画撮影の花目付 林朝恵。

 和泉佳奈子についてはこちらの記事も読まれたい。ライターは同じく37[花]で放伝し、第50期[守]みちのく吉里吉里教室で師範代デビューをする林愛である。

 

 自然光がやわらかく差し込む2階の特別展示室には臨書帖が展示されている。「臨書はこうして帳面に古典を自分で書き写していくもの。ノートなんだよね」

 

 幕末三舟のひとり山岡鉄舟の書「成田山不動明王」。

 「勝海舟よりだいぶうまい」字の配り、力の落とし方など、何が賞賛に値するのか瞬時に評価を言葉にしていく。

 

 千夜千冊エディション『大アジア』にも登場する金玉均の書。「この人の書をちゃんと見るのは初めてだ」

 千夜に登場する人物たちがこうして書となって目の前に立ち上がる。本とともに、その人の書にも触れてみるとより深い〈本の交際〉ができる。

 

 一通り鑑賞を終え、とあるプロジェクトに思いを巡らす。

 「誰もやったことのない書道展というか、書文化展というか、書展をしたいね。デコボコさせたいね」

 既に世に存在するモデルを知り、連想を広げ、そこからイメージとして要約をしていく。まだ誰も見たことのないものに向かうには、今あるものを徹底的にインプットすることが第一歩であろう。

 

 「誰もやったことのない書道展」とは、いつどこで行われるのかはまだ謎だらけであるが、そのための《よ前夜》であった。

 

協力:成田山書道美術館

 


  • 後藤由加里

    編集的先達:小池真理子。
    NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。