宮前鉄也
編集的先達:古井由吉。グロテスクな美とエロチックな死。それらを編集工学で分析して、作品に昇華する異才を持つ物語王子。稽古一つ一つの濃密さと激しさから「龍」と称される。病院薬剤師を辞め、医療用医薬品のコピーライターに転職。
【1】【2】【3】 江戸城本丸表向の東側にある中ノロには詰め部屋があり、諸役人は登城すると、まずこの部屋に入り、衣服を着替え、身なりを整えた。 白石と忠左衛門を載せた権門駕籠の一行が中ノロ門に差しかかる […]
【1】【2】【3】 正徳六年三月の早朝である。朝焼けの赤光は暗雲に呑まれ、落城の焔のように遠近の雲の陰でくすぶっている。過日のように長屋じゅうの溝板が踊り跳ねる叢雨もあろうかと、総後架と井戸の間で汚穢屋が空 […]
【ISIS短編小説】一瞬の皹・日々の一旬 読み切り第六回 粉黛の倣い
「なあ信さま、ここやここ、塗ってくんなまし」 撓垂れかかるような声がして、鯉籠の浅黒いうなじが信盛の眼前に差し出された。事終えた後の辛気にやられて面倒になったというよりは、甘える仕草で帰りにくくさせ、居続け賃をふんだくろ […]
【ISIS短編小説】一瞬の皹・日々の一旬 読み切り第五回 奔馬共鏡
パラ陸上選手である比上不比等の必勝ルーティンは、合わせ鏡の夢を反芻することだった。 合わせ鏡の夢は、義足を装着した比上の裸身が合わせ鏡の間に立つところから始まる。間もなく鏡像のひとつが無限に続く列から歩み出て、比上を […]
【ISIS短編小説】一瞬の皹・日々の一旬 読み切り第四回 ギターの渇き
あの男(ひと)は毎日毎日14時間もアタシに触ってきて、びんっと張り詰めたアタシの大切なところを弾いてくるくせに、翌朝になると、「貴方のような楽器に初めて会いました、どうしよう、僕はどうしたらいいですか」と言わんばかりのダ […]
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