をぐら離 文巻第1週 ─「コスモスとカオス」

2020/11/29(日)06:00
img

 世界読書奥義伝 第14季[離]がついに11月21日、開講しました。

 「をぐら離」では、析匠、小倉加奈子の日常を通した離の姿をお届けしていきます。門外不出の文巻テキストをもとに進められていく離の稽古の様子を少しでも想像いただければと思います。

 

11月21日(土)


「日本はたんに臆病だった。情けない。理由はいくつもあろうが、そのひとつに、いつのまにか日本の論調が、ひたすら「わかりやすさ」に向かうようになったということがある。」
──セイゴオ「ほんほん」2020.11.10



 正午、14離開講。松岡火元校長から続く開講挨拶リレーは火元組が最も緊張する時間である。指を冷やし痺れさせ、出番を待つ。交感神経亢進状態。離学衆もきっとそうだろう。すでに離を並走する同志だ。
 息子は大学受験のために札幌へ。離学衆と息子に、わかりにくさに果敢に向かえ、とエールを送る。いきなりはじまる稽古の様子を横目に明日の撮影に向けて台本を頭に入れる。いずれもシソーラスを探す旅。
 説明するとは、言葉の意味の広がりと重なりの様子を追うことである。

 

 

11月22日(日)


「何を曳くのでしょうか。瞬(またたき)ほどに短いその機というのはいつ来るのでしょうか。どうやって迎えに行けば良いのでしょうか。」
──[離]曵瞬院右筆 おおくぼかよ

「分岐点は離が終わったときにはじめて現れるのではなく、離に向かう日々のなかに見いだされます。」
──[離]武臨院右筆 桂大介


 

 早朝から、職場にてMEdit Laboの撮影。昼の時点で未読メール50件。息子は試験の真っただ中。様々な無我夢中が相互に重なる今日という一日。
 両院火元組の素晴らしい導きによって回答が見違えていく。両右筆のセレンディップな語りかけは、わたしにいま一度、自身の一生の離の意味を問うてくる。
 午後は、おしゃべり病理医の免疫紙芝居劇場の撮影。吉村さんと金くんに、「細胞の自殺を促すキラー細胞は、社会の現象に当てはめたら何になるのか?」と問われ、答えに窮した。生命に学ぶとは単に生命に“見習う”ということではないことに気づかされる。時に生命は、残酷かつ理不尽なふるまいをあえて選択するのかもしれない。

 

               ※撮影:上杉公志

 

 

11月23日(月)


「日本は一人ひとりの内側でT細胞とB細胞を躍らせて、それぞれ一途で多様な面影の国を蘇らせるしかないようだ。」
──千夜千冊986夜『免疫の意味論』


 

 昨日のキラーT細胞のふるまいについてのQが頭の片隅に鎮座したまま動かない。
 そうだ。キラーT細胞たちは自分の危険性を知っている。自分の行動にブレーキをかけるシグナルを持っているし、抑制T細胞という友人もいる。自粛警察やヘイトスピーチには向かわない。瀕死の細胞に自死を促すのは局所限定的であるし、利他に向かいなさい、というメッセージとも言い換えられるのではないか。やはり超個の細胞の方が個のわたしよりもよほど編集的なようだ。
 無事、撮影はクランクアップ。気づいたら未読メール70件。

 

 

11月24日(火)


「43/77日。三振にも負けず積ん読にも負けず、風評にも多忙にも負けぬ丈夫なココロを持てば、いつでも何度でも最初の扉を静かに開くところから本との交際は始められる。まさに「書心、忘るべからず」。
――大音美弥子<多読ジム>読衆あきスタ語録035◆2020年11月23日(月祝)


 

 久しぶりの病理診断。昼間に40件。夜に40件。身体の疲れが目に来ていると思っていたら、しいたけ占いでも「目の疲れに注意」と書かれていた。
 サッショーの「書心、忘るべからず」は離学衆へのエールに聞こえる。ここでの書心の持ち主は、文巻を執筆した火元校長と離学衆の双方。離は、校長と交際できるのだ。

 エディション『大アジア』の再読開始。

 

 

11月25日(水)


「デザインの語源は「計画する」だ。それは先行する「しるし」を生かして、その周辺を前方に脱出することだった。つまりデザイン(構成化・意匠化)とは「脱しるし化プロジェクト」のことなのだ。」
──千夜千冊1520夜『デザインの小さな哲学』



 講評に向けて『デザイン知』を拾い読み。ウェブ千夜も見る。
 de-signareは語源的には「脱・しるし化する」ということだ。倉田別当は図解こそロジカルという。まさにそうだ。絵心の下地には、論理的思考に裏打ちされた構造分析力がある。

 朝、外科カンファレンス1時間。夜、泌尿器科カンファレンス1時間。執刀医と病理医の見立てのすり合わせ。どちらもデザイン知が必要。

 

 

11月26日(木)


「見ているだけでは、何もおこらない。それを見えるようにするにはイメージそのものを分節していかなければならない。」
──千夜千冊1035夜『造形思考』



 環境はわれわれにつねに何かをアフォードしているけれど、それを顕すには最初に分節化、インプットの編集が必要である。それは生体内の異化反応にも似ている。新しいものを生み出すための分解。腑に学べ。

 骨髄像カンファレンス1時間。白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、赤血球増多症、本態性血小板血症。造血細胞たちのかたちの変化から未来を予想する。これも「デザイン知」。

 

この次のページのセンテンスに「!!!」となる。

 

 

11月27日(金)


「人間というのは認識や思索や表現のプロセスのなかで、つねに「照応」「確認」「発見」とともに「迂回」「回避」「解消」をくりかえしているのであって、そのリダンダンシーやアローアンスを含んだフィジビリティこそ人間らしい知を成立させている」
──千夜千冊1230夜『一般システム思考入門』


 

 構造に溺れたい。関係の発見を面白がりたい。とにかくモーラしてそれらを照応させたい。いろんな知をいったん別々に設計してからシステムの中で交差させる。このような編集方法が離のプログラムを構成していることにいまさらながら驚く。

 

 

11月28日(土)


「物語の本質は広い意味での「紛糾」(complication)である。その解きほぐしと解決(resolution)である。そのため大半の物語構造は多くの階層や部分や要素でできあがっているのだが、それだけでは物語は機能しない。」

──千夜千冊577夜「物語論辞典」


 

 遊刊エディストラウンジで、「鬼滅の刃」談義が繰り広げられている。呼ばれた気がしたが、病理診断の合間は、一週目の文巻図解に没頭していた。「鬼滅の刃」に全く興味がないのだが、こういったブームの「なぜ」を知っておくことは大事だと思う。でも、やること(やりたい)リストの中で優先順位は10位以下に。漏れ聞こえてくる議論からは、「ボーダーレス」「無難」といったキーワードが連想された。

 現実で想定外の難題が連打されると、思考を停止し、「想定の境界」をぼんやりさせることで無難に乗り切ろうとする。日本人は特にそう。離学衆は想定外に対し、むしろ境界を決める分節化編集で立ち向かった第1週。

 

【をぐら離】

をぐら離 文巻第0週

をぐら離 文巻第0.5週

 


  • 小倉加奈子

    編集的先達:ナシーム・ニコラス・タレブ。病理医で、妻で、二児の母で、同居する親からみると娘、そして師範であり火元組。仕事も生活もイシスもすべて重ねて超加速する編集アスリート。『おしゃべりな図鑑』シリーズの執筆から経産省STEAMライブラリー教材「おしゃべり病理医のMEdit Labo」開発へ。おしゃべり病理医の編集的冒険に注目!

  • をぐら離 文巻第5週 ─「メディアとしての書物」

    世界読書奥義伝 第14季[離]は、2021年、離スタート。離学衆は第5週の怒涛の稽古に没頭中です。  「をぐら離」では、析匠、小倉加奈子の日常を通した離の姿をお届けしていきます。門外不出の文巻テキストをもとに進められて […]

  • をぐら離 新春特別便「セイゴオの生き方・対談もどき」後篇

    先週に続き、「をぐら離」 新春特別便をお届けいたします。  昨日は、離史上初のオンライン講評会が開催されました。本来「編集はリモートである」ということを考えてみれば、オンラインの形式は至極自然な在り方のように思えました […]

  • をぐら離 新春特別便「セイゴオの生き方・対談もどき」前篇

    明けましておめでとうございます。  「をぐら離」では、析匠、小倉加奈子の日常を通した離の姿をお届けして参りましたが、今回は新春特別編として、セイゴオひびのTwitter編集版、松岡火元校長の「ぼくの生き方」を対談形式っ […]

  • をぐら離 文巻第4週 ─「ルールの発見と適用」

    世界読書奥義伝 第14季[離]は、第4週を終えましたが、稽古じまいができる離学衆は誰一人おらず。をぐらも、離の縁側に身を寄せつつ編集の日々を送ります。  「をぐら離」では、析匠、小倉加奈子の日常を通した離の姿をお届けし […]

  • をぐら離 文巻休信週 ─ 「2020年に突出するための五箇条」振り返り

    世界読書奥義伝 第14季[離]、今週は休信週(と書いて追い上げ週と読む)。難問回答に挑む離学衆を見守りつつ、「2020年に突出するための五箇条」を振り返ってみました。  「をぐら離」では、析匠、小倉加奈子の日常を通し […]