言葉にジャケットを 『千夜千冊エディション ことば漬け』

10/26(土)12:58
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 はじめちょろちょろなかぱっぱ。千夜千冊エディション『ことば漬け』(角川ソフィア文庫)の帯に記された言葉遊びの一節だ。このわずか14文字が呼び起こすイメージは、「ことばが持つ力」をどんな解説文よりも鮮明に伝えている。

 

 言葉は手元で可愛がるばかりではいけない。ときどきはおしゃれなジャケットを着せて未知の世界で旅をさせなければいけない。一方で母国語にも夢中になってみたほうがいい。松岡正剛が長きに渡ることばとその発信者との交際の日々で得た「ことばという文化と接するために重要なこと」だ。『千夜千冊エディション ことば漬け』は、松岡校長自身によるその実践に全身で浸かることができる一冊になっている。

 

 第一章では語呂合わせ・短歌・俳句といった「ようやく編集」にフォーカス。あえて省き、削いだからこそ描くことができる豊穣な世界をリバースエンジニアリングする。

 

 第二章はプラスティック・ワードにあいまい語におネェことば、世に数多ある「ことば」とそれらが育んできた文化をラベリング編集している。大野晋・浜西正人『角川類語新辞典』では「校長流推敲」の秘密に触れることができる。

 

 そして第三章は、日本語の「これまで」と「これから」を辿るクロニクル。「日本のことば」がどんな風に「国語」となり、国語がいかに「日本」を作ってきたか。九夜に渡る「日本語物語」を泳ぎきろう。

 

 第四章は言葉と記憶・共通イメージの結びつきを追い、「世界言語」エスペラント語の試みで締めくくられる。「ことば」が作る意味単位のネットワークとその奥に見える「地」「アーキタイプ」に切り込む章だ。

 

 編集学校はインターネット上の方法の学校。ことばが絶え間なく行き交う場がそこにある。方法の力で動かしたい「イメージ」と「ことば」とは切り離せない。

 

 「ことば漬け」になってとことん言いかえ、読みかえ、着替えてみれば、情報もまた揺れ動き、別様の可能性が生まれるはず。助詞ひとつで岩をも動かして、未知なる編集へ向かおう。

 

【書名】:『千夜千冊エディション ことば漬け』
【著者】:松岡正剛
【目次】:
 前口上

 第一章 省く・縮める

  高柳蕗子 『はじめちょろちょろなかぱっぱ』七七九夜
  金子兜太・あらきみほ 『小学生の俳句歳時記』三六二夜
  蕗谷虹児 『花嫁人形』五六九夜
  種田山頭火 『山頭火句集』三三〇夜
  石川桂郎 『俳人風狂列伝』一二二夜
  寺山修司 『寺山修司全歌集』四一三夜
  俵万智 『サラダ記念日』三一二夜
  平田俊子 『平田俊子詩集』一九三夜
  外山滋比古 『省略の文学』三九九夜

 

 第二章 類で分けて

  大野晋・浜西正人 『角川類語新辞典』七七五夜
  水庭進編 『現代俳句表記事典』一一八四夜
  芳賀綵ほか 『あいまい語辞典』一〇三夜
  W・J・ポール『あいづち・つなぎ語辞典』七九七夜
  ベルクゼン 『プラスチック・ワード』一六八五夜

  ジェローム・デュアメル 『世界毒舌大辞典』二四九夜
  大槻ケンヂ 『ボクはこんなことを考えている』一七六夜
  松本修『全国アホバカ分布考』七一八夜
  尾佐竹猛 『下等百科辞典』三〇三夜
  きたやまようこ 『犬のことば辞典』二四二夜

 

 第三章 日本語の謎

  小池清治 『日本語はいかにつくられたか』一六九七夜
  馬渕和夫 『五十音図の謎』五一一夜
  清水真澄 『読経の世界』六一二夜
  イ・ヨンスク 『国語という思想』一〇八〇夜
  福田恒存 『私の国語教室』五一四夜
  水村美苗 『日本語が亡びるとき』一六九九夜

 

 第四章 ことばと背景

  ヨン=ロアル・ビョルクヴォル 『内なるミューズ』六二五夜
  アンドレ・グロワ=グーラン 『身ぶりと言葉』三八一夜
  大室幹雄 『正名と狂言』四二五夜
  オリヴィエ・ルブール 『レトリック』一〇二〇夜
  ロジャー・シャンク 『人はなぜ話すのか』五三五夜

  ダニエル・シャクター 『なぜ「あれ」が思い出せなくなるのか』六〇六夜
  ガイ・ドイッチャー 『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』一六九五夜
  ダニエル・ネトル他 『消えゆく言語たち』四三二夜
  伊藤三郎 『ザメンホフ』九五八夜

 

 付録 レーモン・クノー『文体練習』

 

 追伸 言葉にジャケット着せる

 


  • 浦澤美穂

    編集的先達:増田こうすけ。メガネの奥の美少女。イシスの萌えっ娘ミポリン。マンガ、IT、マラソンが趣味。イシス婚で嫁いだ広島で、目下中国地方イシスネットワークをぷるるん計画中。