編集かあさん かりんの仕込み

2020/12/02(水)10:52
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かりんの仕込み

「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。


 いつも冬が来る前にかりんのシロップを仕込む。
 作り方は簡単である。「かりんを1センチぐらいの輪切りにする→瓶に詰め込む→上からはちみつを注ぐ」の3ステップ。私が瓶を消毒し、そのあとの作業は長男(12)が担う。

今年用意できたかりん3個

今年のかりんは3つ

 

 11月半ば、晩ごはんの後、かりん3個、プラスチックの容器入りのはちみつ1キロを用意して、シロップ作りを始めた。
 かりんを切る前に何気なくはちみつの味見をしようとした。開封時は大キャップを外して、フィルムをはがさなければならない。ところがキャップが回らない。タオルを巻きつけ、長男と交代で5分ほどがんばる。開かない。プライヤーで挟んで回そうとするが、プラスチックに傷がつくだけで一向に動かない。
 机の上に置いて横からじっくり観察する。製造工程でほんの少しズレて締められているのが原因のようだった。
 どうせ全部使い切るのだからカッターナイフで切ってしまおう。ところが、すべるばかりでうまくいかない。注意深く突き刺すも、刃が入っていかないのである。思いのほか厚みのあるプラスチックが使われていると知る。
 「熱いお湯につけたら、プラスチックが変形して開くと思う」と長男が言うのでさっそく試す。心もち本体は柔らかくなったような気がするが、キャップは回らない。

 手が痛くなってきた。リビングに疲れとあきらめの気配が漂う。明日、お店で交換してもらうという案が長男から出る。でも、も少し粘りたいと私。長女(7)はどちらにも与しない。暗い雰囲気を作るまいと明るく「どっちでもいいと思う」と言う。
 スマホで検索してみることを思いついた。ちょっと休憩といって別室に行く。「はちみつ 開かない」と入れるが、瓶入りのはちみつが固まって開かない場合の対処法ばかりが出てくる。
 持ち方を変えるというのは応用できそうだと思って、リビングに戻り実践していると、長男に「今、何しにいってたか分かったで」と言われる。
 ドキッとするも、長男は「いいと思う。自分も調べてみる」といって、パソコンに向かいはじめた。
 本体をおなかとふとももでしっかりホールドする。キャップではなく本体を回す感覚で。輪ゴムをまいて滑り止めにする。3つぐらい組み合わせて、全身の力を容器に伝える感覚で回してみる。
 開いた!
「やったあ!」長女がストレートに喜ぶ。
「よかった。調べるの間に合わんかったけど」。長男も破顔しながら続ける。「開け方を検索しようとしてたんだけど、まずこの容器をなんて呼ぶのかを調べる必要があった」
 そうそう。実はかあさんも呼び方がわからなった。ぱっと検索して出てくるの、瓶入りの例ばっかりだったよねと話す。
「名前はわかってん。これ、ドレッシングボトルっていうみたい」
 そうなんだ。そこまで到達したのは大したものである。
 一人一さじずつ、味見した。
 なんとか開いてホッとしたのと、語彙が一つ増えた喜ばしさが、はちみつのとろりとした甘味と一緒に身体にしみたわたった。

 

 あとはかりんを切って、瓶に詰めて、はちみつを注いで。
 薬効成分が十分溶けだした2月頃に種と果実を取り除き、できあがりである。喉が痛い時に大さじ一杯をお湯で溶かして飲む。

 

切る

注ぐ。「ここが一番おもしろい」。

 

 

 

 


  • 松井 路代

    編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。

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