連想をひろげて、こちらのキャビアはどうだろう?その名も『フィンガーライム』という柑橘。別名『キャ
ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。

「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。
「ん」で終わる言葉はしりとり遊びでは分が悪い。時には、日の当たるところに連れ出したい。
ならばと思って始めたのが「ん」のつく言葉集め遊びである。
長女(6)、「かんたんだよ。すぐ10個ぐらい言えるもん」とはじめたものの、「えっと、にんじん、だいこん、れんこん」、3つでとまる。
しばらくうなった後に、
「『うーん』も、入れていい? 『うん』もオッケーだよね」
いいよ。いきなり思いもかけない言葉が出てきた。
さらに数秒、考える。
「カヨちゃん!」
自分の名前である。
「〇〇ちゃん、〇〇さん、〇〇くん。せんせい……はだめだ」。
これで8個。上を見たり下を見たりしながら考え、「カン」。カンが出たら「びん」もある。
「やった!」宣言通り、10個集まった。
予想を超える展開だったな。これはもう子ども編集学校のお題候補だなと思っていると、次の日のおふろの時間、今度はかわるがわるに言っていこうよと長女のほうからもちかけてきた。
「じゃあ、スタート。れんこん」。「にんじん」と返す。
しばらく野菜が続いた後、オリオンやリン、マンガンが出てきた。星座と元素。理科大好きな長男(12)からうつってきた言葉だ。
「ん」で終わる元素いろいろ。ネオン、リン、マンガン……
「パン、ドラえもん、おんせん、フライパン、あんぱん、メロンパン、ラーメン」。
入れ替えや連想の技を使うと、「そうきたか~」とすぐに真似する。なかなか編集の筋がよい。
「ボタン、ボンボンリボン、リボン、〇〇ちゃん、〇〇くん、〇〇さん、だいぼうけん、ライオン、うーん、うん」
昨日出た言葉も思い出しながら、つないでいく。
「ペンギン、にゅうめん、そうめん、オランウータン、しゃしん、バイオリン、バキューン」
これまた意外なオノマトペが出た。
「グラタン、カニグラタン、エビグラタン、るすばん、みかん、ごはん」
のぼせてくる。ホー・チ・ミン、ヤンゴンなどが思い浮かぶけど、長女にとっては未知の言葉だろう。振り払って別のを探す。降参はしたくない。ちょっとした思いつきの遊びが死闘の様相を呈してきた。
「じゃじゃーん、じゃーん、たんけん、にっぽん、にほん」
ここで40個。おしまいにすることを提案するが、あともうちょっととせがまれる。
「マンガン、かん、びん……」。
「はい、おわり。たくさん出てきたね!」
お風呂から出て、大急ぎで一緒に書き留めた。
紙にエンピツで書きながら振り返り。「ん」の練習も兼ねて
その週の土曜日、子ども編集学校仲間の吉野さん・けいすけくん親子とズームミーティングをつないだ。近況を少しおしゃべりしたあと、「ん」で終わる言葉集めを一緒にやることにした。
吉野家から一番最初に出てきたのは「デザイン」。それから「パソコン」。
「目の前にあるのに思いつかなかった!」と長女。
さらに「よん(4)」。すかさず「さん(3)」とつなげる。
けいすけくんは最初、姿を見せなかったが、画面の外で、紙に書いてじっくり考えていたようだった。しばらくすると「れんこん」や「てん」と書いた紙を出てくれた。本を見たり、字で書いたりして考える方法もあるんだと知る。10分ほどで30個の言葉が集まった。
吉野さん家とズームで言葉遊び(撮影:吉野けいすけくん)
ズームが終わってからも、何かしている途中に急で「あ、草原も<ん>で終わる」とつぶやいたりする。アタマの隅に「ん」フィルターができて、動くようになったらしい。
さっきも走ってきて、「いままで一回も言ってないの、思いついた。エアコン!」
〇〇編集かあさん振り返り
「やかん」「どかん」「みかん」はいいけど「りんご」はバツ。
あ、「バナナ」もあかん。“あかん”に出くわすと、注意のカーソルがポンと別の方に向かっていきます。
リンゴという言葉の別の顔が見えるおもしろさもありそうです。
言い替えれば、「りんご」はリンゴを意味するだけではなく、「んで終わらない」という顔を持っているのですね。それを見つけるのがとても愉快に感じられる時期がどうも6歳ごろにあるらしい。
(時には大人になってもずっとそれがおもしろい人もいるでしょう。)
いつもは意味にくっつきすぎている言葉を、ほんの少し放してやる「言葉遊び」を遊ぶと、きっとアブダクションがより躍動するようになるのです。
〇〇遊んだ本
『ことばのえほん あいうえお』(五味太郎作、絵本館)
「あ」から「ん」まで、その音で始まる言葉を集めた絵本です。
「ん」のページはちょっと例外、「とんち、にんげん、とんちんかん」。
松井 路代
編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。
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2025-07-02
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ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。
2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。