編集かあさん家の千夜千冊『サブカルズ』

2021/02/02(火)10:19
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  編集かあさん家では、松岡正剛千夜千冊エディションの新刊を、大人と子どもで「読前」している。





 夕方、本屋さんに走り、『サブカルズ』を買ってきた。
 晩御飯を終えて、やっと読めると思ったら、長女が「日曜日だから4人でジェンガしよう」という。
 すぐに終わると思ったジェンガが、なかなか終わらない。ユラユラしながら持ちこたえる。我慢できず、『サブカルズ』を手に取る。
 裏表紙の漢字は「萌」である。長男(13)に見せると「表紙で分かった」と言う。ほんとだ。字紋がデザインされている。地ばかり見ていて気がつかなかった。
 口絵は校長のフィギュアだ。「商品番号ついてるやん。R-14」と笑った後、「取り上げられてるもので一番新しいのは何? 最後のこれかな。読んだことないけど」と住野よるの『君の膵臓をたべたい』を指さした。

 

商品番号つきのフィギュアたち(『サブカルズ』口絵)


 長男は12歳になったあたりで突然、音楽を聴きはじめた。ブログを読み始め、サイトで紹介されている書き手のお気に入りの曲をクリックしてみたのがきっかけの一つだったように思う。スタートがそれだからCDをかけるのではなく、YouTubeで、つまり音楽と映像をセットでインプットする。小さい時からいわゆるヒット曲やアニメの絵、小説的世界観が大の苦手だったが急に変わった。
 
 YOASOBI

 興味を持つと夜を徹して聴くようになった。
 何を聞いているのかは最初は謎だったが、会話の端々や大晦日の紅白歌合戦でYOASOBIを一緒に見たりしたことで、ボーカロイドをはじめPCで作る音楽や、AIが作ったり歌ったりしている楽曲をかなり聞きこんでいることが分かってきた。
 いまや「音楽を聴かない人生なんて信じられない」と言う。その隣で、まったくポップスを聞かずに育ち、オペラが趣味の夫が、「もうこれで最後か」と言いながら、そろそろとジェンガを引き抜いている。 
 長男が聞く音楽はほとんどテレビやラジオでは流れない。その代わりアーカイブや「歌ってみた」などの派生動画がどんどん蓄積されていく。ツイッターで最新情報を拾いながら、アーカイブをマイニングしていく。その過程で自分の「好き」と「嫌い」がくっきりしてくることもおもしろいらしい。
 それにしてもいつのまに子どもたち、ジェンガがこんなに上手くなったのだろう。32段まで到達したところで私のターンになる。相当、注意深く抜いたが、ついに崩してしまった。

 ショートニングと髭剃り

 我が家のジェンガ史上ほぼ最高記録になったことを称えながら手早く片付け、本に戻る。
 第一章の冒頭はスーザン・ストラッサーの『欲望を生み出す社会』だ。
 焼き菓子を手軽にサクサクにするショートニングが実験室で生まれたのって1912年なんだって。伝統的な食材じゃないんだねと話すと、横になっていた長男がむくっと起き上がって、「それがなんでサブカルに関係あるの?」と尋ねてきた。
 ジレットの髭剃りも並んで出てきてるというと「ますますわからない」。
 うーん。生きていく上で必須じゃないものに物語をくっつけて、それが無いといてもたってもいられないようにする、それで大量に売るっていう方法が生みだされて、どんどん洗練されていった。そこに「サブカルズ」の源流があるっていうのが松岡校長の読みなんじゃないかな。
 私は16歳のころ、友達に小沢健二のCDを貸されたことがきっかけでのめり込んだ。岡崎京子の漫画に脳天をハンマーで殴られたほど衝撃をうけた。雑誌を買い、ぴあに並んでチケットをとるようになった。
 「育ち」には、何かに萌えることはけっこう必須じゃないかと思っているから、あんまり簡単に説明してしまわないように気をつけたけど、ついここまで一気に話してしまった。続きはいつか、もう少し大人に近づいてから読んだらいい。

 

 


  • 松井 路代

    編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。

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