空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。

みなさん、こんにちわ。森山です。
季節が秋にうつりましたね。木々や街のファッションの色々の、劇的な「うつり」を堪能したくなって、もっともっと溺れたくなる季節です。
さて、着物まわりのお話に「かさねの色目」ということがあります。
かさね色目が行われるようになったのは平安時代からですが、季節ごとの自然の植物の色合いを衣服に配彩して「季」が移ろいゆくことに自分自身を同化させていきました。
シンクロするのは心地良きこと。
と、古代の人はちゃんとわかっていたのですね。
旺文社『古語辞典』より
さまざまな色の組合せがありますが、この「かさねの色目」において一番のポイントは「配分」。
だって平安時代の装束は「面」で勝負していましたから。
『かさねの色目』平安の配彩美 長崎盛輝
こうしてバランスをズラしてみると、受ける印象が全然かわります。
なんともないと思っていたこの組み合わせが、とても新鮮に心に映ります。
そのまま、辛子色の紬とモスグリーンの水玉の帯を持ち出して、色の配分をかえてみます。(帯は洋服生地からのお誂え)
AからDへ帯締めと帯揚げを取り替えて行くうちに、黄色の配分が増えて緑の濃縮度がさらに増して「珍しい」感じになりました。
檀(まゆみ)の紅葉なので、バッグまたはハンカチなどに紅葉の赤色を挿してもいいかも。
こんな風に、配分による違いをしっかり掴んでいることで、色と色の組み合わせそのものの編集の自由度があがります。「配分」の方法を持っていれば、別様の可能性を実現できる確率が上がり、どんな色同士でも合わせることができるようになるんです。
つまり、身の回りにあるものの「すべての色たち」が「かさねの色目」になっていき、カラー診断や人から勧められる「あなたに似合う色」という束縛からも自分自身を自由にしてくれます。
だって世界にシンクロする(似ていて合う)色がフューチャーされている着物なら、それに応じた「その時だけのわたし」が共鳴しだすのですから。
*檀(まゆみ)
強く、よくしなるため古来より弓の材料に用いられました(真弓)。
秋になるととても美しく紅葉します。
あづさ弓ま弓つき弓年を経てわがせしがごとうるはしみせよ
(伊勢物語 24)
森山智子
編集的先達:和泉式部。SE時代にシステムと着物は似ていることに気づき開眼。迷彩柄の帯にブーツを合わせる、洋服生地を帯に仕立てる等、大胆な着こなしをはんなり決める。イシスにも森山ファンは数多い。
2025年春から多読アレゴリアの「着物コンパ倶楽部」を主宰。
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コメント
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