おしゃべり病理医MEdit Lab第二弾・祝完成!【おしゃべり病理医59】

2022/02/01(火)08:29
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■ついに、監督倒れる?!

 

 「おぐらさん、ついにコモリさんが倒れました。明日の動画最終チェックは延期でも良いでしょうか」

 

 不穏な連絡が“妖しいコーディネーター”衣笠さんから届いた。経済産業省「未来の教室・STEAMライブラリー」事業に昨年度に続いてアプライしていたMEdit Labプロジェクトは、採択が遅れに遅れ、撮影日も延期したりしてスケジュールが超タイトになっていた。“バツグン監督”小森さんはいくらバツグンの体力と気力があるといえど、完徹が続きさすがに疲労はピークに達していた。超クールの目薬を何度目に差してもすっきりせず、全然クールに感じないと呟いていた。聞けば、”キラキラデザイナー”の穂積くんも目の酷使によるドライアイで目が開かないという。穂積くんの長すぎる睫毛が下瞼にくっついている様子を想像した。

 

 あと納品まで3週間という状況下でのZoom会議、“ぶっ飛んでるディレクター”吉村さんは、動画ももっとおしゃべりな方が良いと、動画の中に「おしゃべりおぐら天使」のつぶやきをたくさん入れようと提案した。ドSである。ドMな“おしゃべりプロデューサー”おぐらは、そのアドバイスをまるごと引き受けたうえ、本の目次のように、timestamp代わりのタイトル表示は譲れないと付け加えた。タイトル表示が必要ということは、そこに入れ込む素材を穂積デザイナーがデザインし、小森監督がそれを映像内に挟み込むという作業が、9つの動画にそれぞれ数回入ってくるということを意味する。編集作業はそのたびに膨らんでいく。

 

 ドMはドSの裏返しである。全員が凝り性のMEdit Labメンバーは話し合いのたびにそれぞれに様々なアイディアを提案し、その提案をさらに面白くしようとそれぞれに凝ってしまうために、しばしば編集が止まらなくなる。

 

 スケジュールを再整理していたコーディネーター衣笠さんが、Zoom越しでも青ざめるのが見えた。

 

■強気で見切り発車、MEdit Labの企画

 

 MEdit Labの企画会議は、見切り発車である。経済産業省の公募はだいたいいつも6月くらいと言いつつ8月くらいになることが多い。加えて単年度契約のため、どんなに採択時期がずれ込んでも納品は1月末や2月末に設定され、3月末には一般公開、というスケジュールで動く。そのため、採択されることを前提の上、企画を見切り発車させないと絶対間に合わない。第二弾の企画の始まりも、遡ること2021年の春で、採択の半年も前になる。絶対採択されるはず、という強気の企画スタートなのである。

 

 「前回の教材は、おしゃべり病理医がひとりでおしゃべりしまくる教材だったから、何か別の形にトライしてみたいです。今度は対談スタイルの教材を作りたい。ゲストのお力も借りて、さらに既存の教科を感じさせない、医学がテーマなのかどうなのかもわからない教材にしたいです」。

 

 メンバーみんなでゲスト探しからはじまった。順天堂大学の名ドクターを何人か呼んだらどうか、ということで、NHKプロフェッショナルにも登場したことのある、小児外科医、山高篤行先生と、アンチエイジング、男性医療、そしてロボット手術の第一人者である泌尿器科医の堀江重郎先生がまず候補に挙がった。

 

 そういえば、元ラグビー日本代表の福岡堅樹さんも順天堂大学医学部に入学したじゃないか!スポーツが好きな中高生は、福岡さんが登場する教材ならきっと興味を持って観てくれそうだ。山高先生は、医学部時代、ラグビーに異常な情熱を燃やしてきたという経緯もある。おふたり一緒にお話を聞けばちょうどよい!

 

 堀江先生は、以前、大学関連の仕事でご一緒する機会を得たが、休憩の合間に先生のお話を伺っていると、医学にとどまらず映画、本、スポーツ、あらゆるジャンルに好奇心をお持ちで、しかもとても詳しい。よくよく伺うと、高校時代はジャーナリストになりたかったとか。小学生から志賀直哉を読んでいるという早熟ぶりで、東大ボート部に所属していた際は、活字に飢えてラッセルやベルクソンのような哲学本を読み漁っていたらしい。宇宙物理学者の佐治晴夫さんとの対談本『男性復活』まで出している。なんとなく松岡校長に似ている。これは、ゲストとして堀江先生を呼ばない手はない。

 

 ここまで考えると、「医学の心技体」というテーマがふっと湧いた。スポーツや手術手技など、身体的なプロフェッショナルの方法を考える「カラダワーク」、あらゆるジャンルを自在につなぎながらイノベーティブな試みを巻き起こす方法を考える「コトバワーク」。それぞれ山高先生と福岡さん、そして堀江先生という強力なゲストをお呼びして興味深い話を引き出しつつ、それをベースに編集工学ワークを組み合わせたら面白そうだ。

 

 残りは、「ココロワーク」であったが、すぐに星野概念さんが候補として挙がった。ガイネン先生は某大学の精神科医だが、いとうせいこうさんの友人でありせいこうさんの心のメンテナンスを担当されている主治医でもあり、ミュージシャン仲間でもある。一度、いとうせいこうさんがHyper-Editing Platform[AIDA]のボードメンバーであったとき、せいこうさんの編集パートナーとしてガイネン先生がAIDAの会にいらっしゃったこともあった。ぶっ飛んでるディレクター吉村さんが連絡先を知っている。

 

 このようにゲスト候補がばっちり揃い、あとはおぐらがあの手この手を使って協力いただくよう口説き落とした。


■MEdit Labのダンドリ・ダントツ

 

 タイトルは「おしゃべり病理医のMEdit Lab-医学にまつわるコトバ・カラダ・ココロワーク」と決まり、打ち合わせを重ねながら教材の構成を考えていった。だいたい最初の段階では、まだまだターゲットがぼんやりとしているおぐらの提案書をたたき台とし、そこに吉村さんがまさにぶっ飛んでいるアイディアをいくつも投下し、“きゅんきゅんメディエーター”の金くんが投下されたアイディアの間を走り回りながら混ぜ混ぜし、絶妙なメディエーションの技を魅せてくれる。何度もそういったやり取りを繰り返していきながら教材の内容がブラッシュアップされていく。最終的に完成に近づいた教材の骨組みをもとに、いよいよおしゃべり病理医が台本を作る。

 

 小森さんと衣笠さんとおぐらで撮影スタッフとゲスト講師のスケジュールを調整しながら撮影のダンドリを組み立てる。今年は、コトバ・カラダ・ココロワーク、それぞれの撮影日が1日ずつ、そして、編集レクチャー用に1日、計4日間を撮影に充てた。

 

 撮影中は、小森監督の指示に従い、おしゃべり病理医は極力何でもやるようにしている。撮影は、とにかく土壇場の編集力と度胸と三枚目的ノリの良さが求められる。松岡校長のいう「用意と卒意」の「卒意力」である。ゲストの先生方には自由に楽しくお話をしてもらいつつもワークに向かうように方向性を考えた質問を重ねていく必要がある。一方ソロパートの編集レクチャーの部分では、吉村さんが相変わらず、台本をその場で変更し、おしゃべり病理医に無理難題を要求してくる。金くんは「なんかよくわからないテンションがばっちりだったよ!」とか、慰めのような慰めじゃないようなフォローをしてくれながら、的確なアドバイスを入れてくれる。


 みんなの提案や助言にしっかり応えないとおしゃべり病理医の名が廃れると思って踏ん張る。今回は、おしゃべり病理医Jr.のみなみが参入し、ワークのタイトルコールを担当してくれた。これがまたかなり上手だったため、ママとしてはさらに気張らなくてはいけなくなった。そして今回もハイテンションなDJかにゃこで、「地と図」の解説までやってしまった。動画の確認のたびに恥ずかしすぎて悶絶することになった。

 

■ついに!MEdit Lab第二弾完成!

 

 こうして撮影が終わると、あとは、小森監督の膨大な動画編集作業が待っている。おしゃべり病理医は、ゲストの先生方と自分の似顔絵や細胞を毎夜描きまくり、ワークブックや指導要領を書きまくる。

 

 今回は、対談形式だったため、どうしても話が冗長になるし、台本とはかなり違った話にもなっていたりする。すべてのおしゃべりに字幕を入れる作業も入り、特に小森さんの編集作業は昨年度に増してはるかに大変になった。文脈を際立たせながら、3台のカメラの映像をうまく繋ぎ合わせてのオフライン編集からはじまり、そこに、マルチ・オーディオ(MA)と呼ばれるBGMを含めた音のバランス調整があり、オンライン映像を作っていく。さらに、音がフィックスして尺の決まった映像内に、「おしゃべりおぐら天使のつぶやき」「検索窓」「QRコード」「タイトル」「キーワードテロップ」といった穂積くんと”こだわりアニメーター”の伊藤さんデザインの素材をどんどん投入していく。小森さんが倒れたのは、この最後の編集作業の最中だった。

 

 小森監督は、バツグンの回復力で、翌日に映像の最終チェックも済ませられた。小森さんや穂積くんの編集のプロセスを垣間見ることもでき、改めて一緒にひとつのものを創作している喜びに身を浸した。そしてついに教材完成!動画とともに活用してもらうワークブックと先生のための指導要領とともに、1月31日、無事に納品できた。ぱちぱちぱち。

 では、9つの動画教材のサムネイル(もちろん、穂積デザイン)をご紹介します!


★コトバ1:
 帰ってきたおしゃべり病理医、泌尿器科医の秘密に迫るーおしっこ道に入門します!


★コトバ2:
 30万年後にオトコはいなくなる??男性復活の鍵は「情報編集」にあり!

 

★コトバ3:
 カナコとシゲオの探Q箱 本は3冊で読むべし!!

 

 

★カラダ1:
 日本を代表する小児外科医と元ラグビー選手登場!!アーティストな俺たちのダンドリダントツ

 

★カラダ2:
 Trust my hands!不可能を可能にするんだ!!熱きラガー魂でイメージをマネージせよ!!!

 

★カラダ3:
 初公開!記事になった手術をお見せします!学びの極意は「ふりかえり」にあり!

 

 

★ココロ1:
「ないようである」を見つける対話 もやもやに答えをださないココロの先生

 

★ココロ2:
診断されると病気になる? うつにならない「地と図」という方法

 

★ココロ3:
みんな「いいね!」病にかかってる 「たくさんの私」のススメ

 


 無事、公開となったらお知らせに参ります。来年度はいよいよ、2年間、育ててきたMEdit Labをさらに展開していくためのあれこれを計画中。わたしも一緒に活動してみたい!という方がおられましたら、おしゃべり病理医にご連絡くださーい!

 それではみなさん、ご一緒に~! Let’s MEdit Q~~~!!!!!


  • 小倉加奈子

    編集的先達:ブライアン・グリーン。病理医で、妻で、二児の母で、天然”じゅんちゃん”の娘、そしてイシス編集学校「析匠」。仕事も生活もイシスもすべて重ねて超加速する編集アスリート。『おしゃべり病理医』シリーズ本の執筆から経産省STEAMライブラリー教材「おしゃべり病理医のMEdit Lab」開発し、順天堂大学内に「MEdit Lab 順天堂大学STEAM教育研究会」http://meditlab.jpを発足。野望は、編集工学パンデミック。