すっぴんGallery FOOD+アート→人生フルーツ

06/04(木)10:27
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 SNSで、ブックカバーチャレンジ等々、リレー流行り。編集のツワモノが揃う中で私の出番などとてもないと思っていたところ回ってきたのは、料理本のバトン。お料理のことなら、、、と考えを巡らせた。STAY HOMEで生まれた、通勤時間の2時間半でパンを焼き、上手く焼けたときは、会えない友人や家族に送って、ご挨拶と共に交わされる、元気確認の対話が楽しい。

 

 パンづくりを習うようになって、酵母の発酵の過程や、小麦を手で捏ねる時間が、日々の忙しさにブレイクを生み、自然と、素材や身体と食べ物のことを考えるようになった。

 

 アートの世界でも、FOODは、根源的な生き方に繋がる関心事として、大きく取り上げられるようになった。ロンドンのVictoria and Albert Museumでも、FOOD: Bigger than the Plateの話題は新しい。

 

 また、国立科学博物館では中止になってしまったのが、残念だが、”和食展“でも取り上げられるほど、日本の食や文化への注目は見逃せない。

 

 便利な時代、なんでも手軽に手に入り、ショートカットで無駄を省き、効率を重んじることで多くの事を一日に詰め込む生活している中で、見逃していること、置き去りにしていること、本当の豊かさとは何かと言う事を、ここでもまた思い起こさせられる。

 

 さて、ここで料理本のことに戻る。その美しいスローライフが大きく話題になった、津幡修一、秀子ご夫妻の『ときをためる暮らし』をご紹介したいと思う。

 「食べることは生きること。料理は日々の暮らしの中にある。」いまこそ、時間をかけて丁寧に、自分の手で作り、そのゆっくりコツコツ貯めた時間の豊かさに気づく人生に学ばせられる。

 

 修一さんは、建築家として、日本住宅公団に勤め、戦後の日本の住宅事情や生活スタイルが大きく変わる中で、住宅需要に応えるため、多くの公共団地を公団の中で設計した。高度経済成長時代の中で、ご自身の思想とは裏腹に画一的、均質的、効率的な住宅供給に疑問をもつ。最後はご自身が設計に関わった高蔵寺ニュータウンの分譲地を2ブロック購入し、ドイツのクラインガルテンをお手本に自給自足の生活を目指し、菜園を耕し、自らの生き様を通して理想の暮らしを追求した。また、妻として修一さんの生き方を尊重し、家族を支えた秀子さん。修一さんが野菜を作り、秀子さんはお料理をする。料理は、家族とのダイアローグだった。

 

 

 

 

 

 

 私は、修一さんがお元気な時、展覧会に寄せていただくインタビューを収録するため、高蔵寺のお宅に通い、沢山のお料理をいただきながらお話を聞き、その後もお手紙のやり取りをさせていただいた。今では、大切な思い出である。その後、映画『人生フルーツ』で、建築家としてその気骨を通した修一さんの人生と、四季折々を彩る美しい菜園が紹介され、すでに多くの共感を得ていることは周知のとおり。

 料理そのものが、家族との対話、お二人の暮らしはいつまでも人生のお手本である。

 

 

 

 

 


  • 岡部 三知代すっぴんロケット

    編集的先達:トーヴェ・ヤンソン。師範代時代は小さい子どもをかかえ、設計担当として建築現場をヘルメットをかぶりながら駆け巡り、編集稽古をポリロールした。ギャラリーの立ち上げをまかされ、奔走し、学芸員となって、メセナアワード2014を受賞。その企画運営は編集学校で学んだ編集力が遺憾なく発揮されている。

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