人々が語り継いできた「おはなし」は、最も古く身近な編集だ。おはなしにすると子どももわかる。2019年7月28日、おやこ絵本ワークショップの報告会を兼ねた編集サロンが開かれた。参加した編集かあさんたちは「事実をおはなしにする方法に興味がわいた。子どもへの伝え方にも生かしたい」と子育てのヒントに前のめり気味。
当日開催されていた、ならまちセンターの「絵本ギャラリー」を訪れた。おやこ絵本ワークショップを続けている吉野陽子ナビは、センター内の市立図書館が展示する絵本エリアを見て歩いた。「おいしいおはなし」「いきものたち」「むかしむかし」「どこへ行こうかな」など、12のコーナーに分類されている。そのなかの「奈良のほん」の前で足を止める。他のコーナーと違い、見出しだけではどんな本があるのかが分からなかったからだ。
置かれていたのは民話の絵本。御所市伏見の焼き討ちの史実を「火を恐れる仁王さん」という説話にした『井戸のこわい仁王さん』(なかたにゆか、夢絵本製作委員会)、ニホンオオカミが最後に捕獲された東吉野村で犬と幻のオオカミが出会う『ぼく、ニホンオオカミになる!! 』(マスダケイコ、リーブル出版)、唐招提寺のすみ鬼にされてしまった鬼と少年が交流する『すみ鬼にげた』(作:岩城範枝/絵:松村公嗣、福音館書店)、金峯山で狼藉をはたらき、カエルにされた男の顛末を描く『蛙飛び』(松田大児、コミニケ出版)など、20冊以上。史実の小さな断片から広がる物語の数々に遭遇した吉野は、「地元の歴史を子どもに教える方法を見つけました」。7歳になる息子と住むこの場所に向ける注意の角度が変わった。
近鉄奈良駅から絵本ギャラリー会場までの道中、もう一人のナビーゲーター・松井路代は、ならまちの商店街で町がたりを披露した。語りのパフォーミングは学生サークルで鍛えた。今、奈良と言えばかき氷らしい。商店街にかき氷の看板が多いのも頷ける。奈良と氷の関係は古く、氷室神社では奈良時代より献氷祭が行われてきた。
絵本ギャラリーにかき氷の民話はなかった。編集術を使ったかき氷のおはなしを読んでみたい。さあ、編集かあさんの出番だ。
吉野陽子
編集的先達:今井むつみ。編集学校4期入門以来、ORIBE編集学校や奈良プロジェクトなど、18年イシスに携わりつづける。野嶋師範とならぶ編集的図解の女王。子ども俳句にいまは夢中。
イドバタイムズ issue.11 「よみかき」を超えて―「よみかき編集ワーク」レポート
子ども編集学校のスタートアップ部門である「子どもプランニングフィールド」で、7月9日、「よみかき編集ワーク」が開催された。編集学校の内外から小学生6名、大人12名が参加。2時間かけて、子どもと大人が同じお題に取り組み、本 […]
イドバタイムズ issue.7 11人の優しいイシス人による「型り直し」
編集学校の方法を子どもたちのために外へつなぐ。 「イドバタイムズ」は子どもフィールドからイシスの方法を発信するメディアです。 学齢期の子を持つ親にとってゲームは常に悩みと共にある。子どもとゲームを編集的につ […]
イドバタイムズ issue.3 そのコミュニケーション、生きてますか?―「ことば未満ラボ」レポート
編集学校の方法を子どもたちのために外へつなぐ。 「イドバタイムズ」は子どもフィールドからイシスの方法を発信するメディアです。 子どもフィールドに「ことば未満ラボ」がオープンした。まだ言葉があまり話せない子ど […]
イドバタイムズ issue.1「育ちの場がイシス式になる日」
編集学校の方法を子どもたちのために外へつなぐ。 「イドバタイムズ」は子どもフィールドからイシスの方法を発信するメディアです。 わいわいおしゃべりしているようだけど、イシスの学びを次世代に向けて本気でやろうと […]
子ども編集学校は動きだすか? 半年やってわかってきたこと【子どもフィールド最新情報】
親子から大人まで、全世代が参加できるイシス子どもフィールド。実験広場として4月にプレ・オープンし、半年が経ちました。親子で編集体験したい人、子どもの発想をのぞきたい人、総勢77名が参加中。子ども編集学校への期待の大きさが […]